この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
課税 |
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財政政策のありさまのひとつ |
日本の租税(にほんのそぜい)は、国税と地方税からなる。日本において租税は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と日本国憲法第30条で規定されている。
租税の多くは申告納税制度が採用されている。納税者は年末調整・確定申告などを行うことにより、自ら税を納税する。
日本国憲法第30条では、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。」と納税の義務について規定している。同条は国民に納税の義務を課したものとして国家による徴税の根拠となっている。
租税法律主義とは、租税は、民間の富を強制的に国家へ移転させるものなので、租税の賦課・徴収を行うには必ず法律の根拠を要する、とする原則。現代では、ほとんどの民主的な国家で租税法律主義が憲法原理とされており、大日本帝国憲法では第62条が、日本国憲法では第84条がこれを定めている。伊藤博文著憲法義解は大日本帝国憲法第62条の租税法律主義を次のように解説している[3]。
「新に租税を課するに当たっては、議会の協賛を必要とし、之を政府の専行に任せないのは、立憲政の一大美果として直接臣民の幸福を保護するものである。蓋し、既に定まった現在の税の外に、新に徴税額を起し及び税率を変更するに当たって、適当な程度を決定するのは、専ら議会の公論に依頼せずにする事は出来ない。もし、この有効な憲法上の防範がなければ、臣民の富資はその安固を保証する事が出来ない。」
この原則が初めて出現したのは、13世紀イギリスのマグナ・カルタである。近代以前は、君主や支配者が恣意的な租税運用を行うことが多かったが、近代に入ると市民階級の成長と法治主義の広がりに伴い、課税に関することは課税される国民側の代表からなる議会が制定した法律の根拠に基づくべしとする基本原則、すなわち租税法律主義が生まれた。
租税公平主義とは、租税は各人の担税力(租税負担能力)に応じて公平に配分されるべきであり、租税に関して全ての国民は平等に扱われるべきだという原則である。この原則は、日本国憲法第14条第1項が定める平等原則が、租税の分野に適用されたものである。
日本の税制はほぼ毎年改正されている。通常のスケジュールでは、所得税や法人税の場合は財務省主税局が原案を作成し、12月末に税制改正大綱が示される。翌年1月に内閣が法律案綱領を閣議決定し、内閣提出法案の形で国会に提出、3月末に成立する[4]。
租税法の成立・改正過程では税制調査会が大きな影響を与えている。通常、税制調査会は内閣総理大臣の諮問機関(審議会)・政府税制調査会(政府税調)と政権党(主に自由民主党)の党組織たる自由民主党税制調査会(党税調)がある。政府税調が基本的な事項の調査内容を示し、党税調が細部(特例・免除、租税特別措置法)を決めていくという方法が採られている。60年代には政府税調が中心的な役割を果たしていた。高度経済成長が終わり、税収の自然増がなくなると政権党の自民党税調の影響力が増大する[5]。しかし、21世紀には党税調の力も落ち[6]、総理大臣官邸が自民党の党税調を押し切ったとする報道も見られるようになった[7]。
税制の改正は利害関係者から与党・省庁などへの要望(インプット)を受けて、租税法令の形で制定(アウトプット)される。施行された法律は様々な利害関係者に影響を当たれるため、彼らが与党・省庁などに要望(インプット)をする。このようなサイクルが毎年繰り返されている[8]。
財務省の外局で国税の賦課徴収を担当する国税庁は国税徴収を行う執行機関であり、適切・公平な賦課徴収を実現するために法令解釈や事務手続きなどで周知・広報を行っている[1]。このうち、法令解釈通達は国税庁長官から職員への命令で、法規ではなく形式的には行政組織内のみを拘束するが、実質的には納税者に大きな影響を与える。文書回答事例では、課税関係が不明な場合、納税者が税務署に紹介して文書による回答を得ることができる。
賦課された租税を徴収(納税)する方法として、普通徴収・特別徴収・源泉徴収などの方法がある。賦課された租税が滞納された場合、徴収権者は一定の要件により、滞納者の財産を差し押さえ換価するなどの方法により、滞納された租税を強制的に取り立てることができる。詳細は滞納処分を参照のこと。
ここでは日本の租税の概要を、主として内部リンクを区分して示す。
直接税 | 間接税 | |||
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国税 | 普通税 | 所得税 法人税 地方法人税 地方法人特別税 特別法人事業税 復興特別所得税 復興特別法人税[注釈 1] 相続税 贈与税 地価税(停止中) |
酒税 揮発油税 地方揮発油税 石油石炭税 航空機燃料税 石油ガス税 たばこ税 たばこ特別税 とん税 特別とん税 自動車重量税 登録免許税 印紙税 関税 国際観光旅客税 消費税 | |
目的税 | 森林環境税 | 電源開発促進税 | ||
地方税[注釈 2] | 道府県税 | 普通税 | 道府県民税(住民税) 事業税 |
地方消費税 道府県たばこ税 ゴルフ場利用税 自動車取得税 軽油引取税 |
目的税 | 狩猟税 水利地益税 |
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市町村税 | 普通税 | 市町村民税(住民税) 固定資産税 軽自動車税 鉱産税 特別土地保有税(停止中) |
市町村たばこ税 | |
目的税 | 事業所税 都市計画税 水利地益税 共同施設税 宅地開発税 国民健康保険税 |
入湯税 |
法定外普通税 | 法定外目的税 | |
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道府県税 | 石油価格調整税(沖縄県) 核燃料税(福井県、愛媛県、佐賀県、島根県、静岡県、鹿児島県、宮城県、新潟県、北海道、石川県) 核燃料等取扱税(茨城県) 核燃料物質等取扱税(青森県) |
産業廃棄物税(三重県・青森県・岩手県・秋田県・滋賀県・奈良県・山口県・新潟県・京都府・宮城県・福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・鹿児島県・宮城県・熊本県・福岡県・愛知県・沖縄県・山形県) 産業廃棄物処理税(岡山県) 産業廃棄物埋立税(広島県) 産業廃棄物処分場税(鳥取県) 産業廃棄物減量税(島根県) 循環資源利用促進税(北海道) 資源循環促進税(愛媛県) 宿泊税(東京都) 乗鞍環境保全税(岐阜県) |
市町村税 | 別荘等所有税(静岡県熱海市) 砂利採取税(神奈川県山北町) 歴史と文化の環境税(福岡県太宰府市) 使用済核燃料税(鹿児島県薩摩川内市) 狭小住戸集合住宅税(東京都豊島区) 空港連絡橋利用税(大阪府泉佐野市) |
山砂利採取税(京都府城陽市) 遊漁税(山梨県富士河口湖町) 環境未来税(福岡県北九州市) 使用済核燃料税(新潟県柏崎市) 環境協力税(沖縄県伊是名村・同県伊平屋村・同県渡嘉敷村) |
廃止されたものなど
財務省の統計を参照(単位:億円)
総務省の統計を参照(単位:億円)
ここでは、「中央政府の財源となるもの」と「地方政府の財源となるもの」を合わせて示す[注釈 3]。
江戸時代後半の発展の理由の一つに、抜け穴だらけの検地(山奥の隠し田・米以外の畑は対象外)の結果、低税制であったからという事実がある[11]。
明治時代初期には、税収に占める地租の割合が圧倒的であった。その後、1899年(明治32年)には、酒造税が税収に占める割合がトップに立った(28%)。また、消費税や課税等を合せた広義の消費税は、1907年には過半数を占めるまでになった。すなわち、明治年間を通じた税収の変化としては、地租優位から間接税優位の時代への移行が見られたといえる。
軍事費確保のために、可能な限り税収を増やすため1940年度の税制改正で、直接税(法人税・所得税)の比重が高まった[12]。