有機リン中毒 (ゆうきリンちゅうどく)は、有機リン (OPS)による中毒 である[ 4] 。有機リンは、殺虫剤 、医薬品、神経剤 に使用される科学物質である[ 4] 。
症状は、唾液 と涙の過剰分泌、下痢 、嘔吐、瞳孔の縮小 、発汗、筋肉の振戦、混乱などである[ 2] 。多くの場合、症状の発症は数分から数時間以内であるが、症状が現れるまでに数週間かかる場合もある[ 5] [ 1] 。症状は数日から数週間続くことがある[ 2] 。
有機リン中毒は、開発途上国 の農業地域での自殺 未遂による場合が最も一般的であり、事故的な境遇は少ない[ 2] 。暴露経由は、飲用、蒸気吸入、皮膚から浸透による可能性がある[ 4] 。
根本的な機序は、有機リンがアセチルコリンエステラーゼ (AChE)の働きを阻害することにより、体内でのアセチルコリン (ACh)の蓄積につながって中毒を引き起こす[ 2] 。
診断は通常、症状に基づいて行われ、血中のブチリルコリンエステラーゼ 活性を測定することで確認できる[ 2] 。カルバメート中毒 も同様の症状がある[ 2] 。
予防には、非常に有毒な種類の有機リンの禁止などに取り組むことである[ 2] 。農薬を扱う人々の間では、防護服を着用すること、帰宅前にシャワーを浴びることも有用な予防である[ 6] 。
有機リン中毒を患っている人への主な治療法は、アトロピン 、プラリドキシム などのオキシム 、 ジアゼパム の投与である[ 2] [ 4] 。酸素 や点滴 などの一般的な処置も推奨される[ 2] 。活性炭 または他の手段で胃を除染する試みの有用性はみられない[ 2] 。医療従事者が中毒患者の世話をすることにより自身が中毒になるという理論上のリスクがあるが、そのリスクは非常に低いとされる[ 2] 。
有機リンは世界中で最も一般的な中毒の原因の1つである[ 2] 。年間300万件近くの中毒が発生し、20万人が死亡している[ 2] [ 3] 。結果的に、中毒になった人の約15%は死亡している[ 2] 。有機リン中毒は遅くても1962年から報告されている[ 7] 。
^ a b Stoller, James K.; Michota, Franklin A.; Mandell, Brian F. (2009) (英語). The Cleveland Clinic Foundation Intensive Review of Internal Medicine . Lippincott Williams & Wilkins. p. 108. ISBN 9780781790796 . オリジナル の2017-09-10時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170910145319/https://books.google.com/books?id=O9F7wtiPWxgC&pg=PA108
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t Eddleston, Michael; Buckley, Nick A; Eyer, Peter; Dawson, Andrew H (February 2008). “Management of acute organophosphorus pesticide poisoning” . The Lancet 371 (9612): 597–607. doi :10.1016/S0140-6736(07)61202-1 . PMC 2493390 . PMID 17706760 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2493390/ .
^ a b Berg, Sheri; Bittner, Edward A. (2013) (英語). The MGH Review of Critical Care Medicine . Lippincott Williams & Wilkins. p. 298. ISBN 9781451173680 . オリジナル の2017-09-10時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170910145319/https://books.google.com/books?id=TftPBAAAQBAJ&pg=PA298
^ a b c d King, Andrew M.; Aaron, Cynthia K. (February 2015). “Organophosphate and Carbamate Poisoning”. Emergency Medicine Clinics of North America 33 (1): 133–151. doi :10.1016/j.emc.2014.09.010 . PMID 25455666 .
^ “Clinical features of organophosphate poisoning: A review of different classification systems and approaches” . Indian J Crit Care Med 18 (11): 735–45. (2014). doi :10.4103/0972-5229.144017 . PMC 4238091 . PMID 25425841 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4238091/ .
^ Quandt, SA; Hernández-Valero, MA; Grzywacz, JG; Hovey, JD; Gonzales, M; Arcury, TA (June 2006). “Workplace, household, and personal predictors of pesticide exposure for farmworkers.” . Environmental Health Perspectives 114 (6): 943–52. doi :10.1289/ehp.8529 . PMC 1480506 . PMID 16759999 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1480506/ .
^ (英語) Neurological Practice: An Indian Perspective . Elsevier India. (2005). p. 479. ISBN 9788181475497 . オリジナル の2017-09-10時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170910145319/https://books.google.com/books?id=qgUGdnZ3hAYC&pg=PA479