王 晶(ウォン・ジン、英語表記:Wong Jing、本名:王日祥、1955年5月3日 - )は、香港の映画監督、脚本家、映画プロデューサーである。作品に俳優として出演することもある。テレビドラマの分野においても、監督・プロデューサーなどを務めている。
日本語圏に限り、バリー・ウォンの別名でも呼ばれる。日本語圏以外(中国語圏含む)で「バリー・ウォン」という名前は一般に、1980年代から1990年代に香港映画の制作で活躍した香港の脚本家・演出家である黄炳耀(ウォン・ピンユー、1946年 - 1991年)を指す。日本語圏の各種資料やデータベース類では、過去30年以上にわたって、ウォン・ジンとウォン・ピンユーが混同されている場合が多く、注意を要する。
父は1940年代から1990年代にかけて香港で活躍した著名な映画監督王天林(中国語版)である。
香港中文大学文学系に在学中から映画に熱中。大学卒業後はTVBに就職して脚本家となり、1981年に監督デビューを果たす。
日本では、人気コミックを荒唐無稽な発想で映画化したジャッキー・チェン主演の『シティーハンター』(1993年)が代表作としてよく知られている。
日本の映画監督及び映画作品で影響を受けたものとして、五社英雄監督『御用金』(1969年)、小林正樹監督『怪談』(1965年)を挙げている[1]。
非常に多作であり、監督した映画は香港・中国大陸側などを通算して100本を超える。また、自身が俳優として映画に登場することもよくある。
日本語圏における「バリー・ウォン」という別名と「黄炳耀」との混同
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上述の通り、日本語圏以外(中国語圏含む)では、「バリー・ウォン(Barry Wong)」という名前は一般に黄炳耀(ウォン・ピンユー)を指すが、日本語圏の映画データの多く(特に2010年以前)は、ウォン・ジンについても「バリー・ウォン」という別名を採用している場合が多い。しかし、ウォン・ジン本人が「バリー・ウォン(Barry Wong)」という別名は日本で勝手につけられたものであると述べたことが2010年に日本で出版された書籍[2]の中で言及されており、自ら「Barry Wong」と名乗ったことは一度もない。
中国語版Wikipediaや百度百科の「王晶」の項目においても「Barry Wong」という別名の存在は一切確認できず[注釈 1]、どのような経緯で「バリー・ウォン」という別名がウォン・ジン本人の知らない間に日本語圏で勝手に定着したのかは、定かではない[注釈 2]。
日本語圏の各種資料やデータベースには、ウォン・ジンとウォン・ピンユーがともに「バリー・ウォン」と表記されている上に漢字も併記されておらず2名の判別ができない場合がある。この問題を解決するには、中国語のデータベースにおいて「王晶」と「黄炳耀(黃炳耀)」を個別に確認する必要がある。
中国語で検索を行う場合、中国大陸側に「王晶」(普通話(北京語)音転記で「ワン・チン」)という同一漢字表記の女優が2名存在しており、中国語圏のデータベースにも一部、混乱が見られる。さらに、そのうちの1名は2005年以降、香港側との仕事に参画しており、ウォン・ジンと複数回共同で仕事をしている点に注意を要する。
一部の日本語圏のデータベースでは、王晶とラテン文字表記が同一の香港女優・黄静(広東語音転記:ウォン・ジンもしくはウォン・チン、英語表記「Wong Jing」、繁体字中国語:黃靜、広東語の発音は「静」の声調を除き同一)と混同されている場合がある。ただし、黄静の出演作品は2022年3月現在、2015年の香港映画『十年』というオムニバス作品の中の『冬のセミ』一作しか確認されていない[3][4]。
日本未公開の作品が多数存在するため、利用者の便宜を考慮し中国語原題(繁体字中国語)と主演俳優名を併記する。日本語タイトルが存在しない作品は、原則として繁体字中国語で表記する。
香港映画界で多大な業績を上げているウォン・ジンとウォン・ピンユーの2名について、30年以上にわたり日本語圏において情報の混乱が継続していることを鑑み、中国語版Wikipediaの項目がある作品については、それらのリンクも付する。
- 天下第一 (2004年) 脚本/製作
- 不死鳥の如く(原題:浴火鳳凰)(2006年) 出演/製作総指揮
- ^ 『香港映画フォーラム Q&A』2005年10月17日にて
- ^ 『中華電影データブック完全保存版』キネマ旬報社、2010年
- ^
香港影庫 HKMDB (unknown). “黃靜 Wong Ching (4)”. 香港影庫 HKMDB. 2022年3月15日閲覧。
- ^ 黎梓緯 (2016年1月22日). “【十年】看了半篇《環時》 女主角黃靜自白:現實就如此可怕(繁体字中国語)”. 香港01. 香港01有限公司. 2022年3月15日閲覧。
- ^ 香港影庫の英文版に「Barry Wong (2)」という別名の記載が確認できるが、これは日本から香港に逆輸入された表記の可能性が考えられる。香港影庫の中国語版に「Barry Wong」の別名の記載はない。
- ^ ウォン・ジン(王晶)とウォン・ピンユー(黄炳耀)は複数回、共同で仕事をしていることが中国語資料により確認されている。
日本でもヒットしたサモ・ハン・キンポー、ジャッキー・チェンらが主演の香港映画『七福星』(1985年、日本公開は1987年)ではウォン・ピンユーが脚本を担当し、ウォン・ジンはカメオ出演している。また、『富貴兵團』(1990年、日本では2001年にDVDスルー)では、ウォン・ジンとウォン・ピンユーが共同で脚本を執筆している。さらに、チャウ・シンチー主演の香港映画『ファイト・バック・トゥ・スクール』(1991年、日本では2003年にVHS&DVDスルー)ではウォン・ジンが製作を、ウォン・ピンユーが脚本を担当している。
これらのことから、何らかの手違いで日本の映画関係者がウォン・ジンとウォン・ピンユーの2名を混同した可能性が否定できない。両者の名字を漢字で書くと「王」「黄」となり、中国語話者と日本語話者であれば文字で明確に区別できるが、広東語発音のラテン文字転記はいずれも「wong」、声調は広東語六声の第四声となり、同一になってしまうためである(ちなみに、普通話(北京語)の発音だと「王」が「wáng」、「黄」が「huáng」なのでラテン文字転記でも明確に区別できる)。なお、ウォン・ピンユーは1991年に早逝している。
日本語圏におけるウォン・ジンとウォン・ピンユーの混同について、各種資料で確認できる範囲では、ウォン・ジンが監督を務めた1986年の映画『マジッククリスタル』(アンディ・ラウ主演)の日本語版VHSソフト(発売元:東北新社)では「監督●ウォン・チン」、1987年の映画『男たちのバッカ野郎』(チョウ・ユンファ主演)の日本語版VHSソフト(発売元:シネ・ワールド)では「■監督 ウォン・チイン」と、比較的広東語の原音に忠実なクレジットが記載されており、この時点までは両名が別人として認識されていたと見られる。
ところが、ウォン・ジンが製作した『ツイ・ハークのゴーストホーム/13日の金曜日の妻たちへ』の日本語版VHSソフト(1987年、日本ではビデオスルー、国内販売元:大映 映像事業部)のパッケージにおいて「製作総指揮…王晶(バリー・ウオン)」という誤ったクレジット表記が出現している。この作品の日本語版VHSソフトの発売時期は明確ではないが、当時のアフレコの台本に「平成元年6月」と記載されていることから、1989年頃と推定される。
この誤った表記は1990年日本公開の映画『ゴッド・ギャンブラー』のクレジット表記(国内配給元:松竹富士、日本語版VHSソフト国内販売元:エスピーオー)にも引き継がれ、「バリー・ウォン監督作品」とクレジットされてしまった。
その後、1993年日本公開の映画『シティーハンター』(国内配給元:東宝東和、日本語版VHSソフト国内発売元:サントリー、販売元:ポニーキャニオン)が「監督・脚本:バリー・ウォン『ゴッド・ギャンブラー』」というクレジット表記を採用してしまった。この作品が日本語圏で著名になったことから、それ以降の日本語圏におけるウォン・ジンのクレジット表記が「バリー・ウォン」になってしまっている場合が多い。
2022年4月現在、allcinemaは「バリー・ウォン」でウォン・ジンとウォン・ピンユーを個別に検索できるが、一部データに誤りが見られる。さらに、KINENOTEは「バリー・ウォン」と「ウォン・ジン」が並立している。
ウォン・ジン本人が「バリー・ウォン」という別名の存在を否定した2010年以降は、日本語圏でも「ウォン・ジン」とクレジット表記されるようになってきている。
- ^ a b 「ジェニファー・ツェー」(謝婷婷)は、「ジェン・ツェー」と表記されることもある。パトリック・ツェー(中国語版)の実娘であり、ニコラス・ツェーの妹である。
- ^ 本作未公開の情報出典:百度百科 十二金刚(王晶计划执导的电影)
- ^ a b この作品の脚本は、日本語圏以外(中国語圏含む)で「バリー・ウォン」と呼ばれる黄炳耀(ウォン・ピンユー)が担当しており、日本語圏の資料やデータベースに混乱が見られるので注意を要する。
- ^ この作品の脚本は、日本語圏以外(中国語圏含む)で「バリー・ウォン」と呼ばれる黄炳耀(ウォン・ピンユー)がウォン・ジンと共同で担当しており、日本語圏の資料やデータベースに混乱が見られるので注意を要する。
- allcinemaは、「バリー・ウォン」について「王晶」と「黄炳耀」のデータを個別に検索できるが、ごく一部に両者の混同が存在する点に注意が必要である。
- KINENOTEは2022年4月現在、「バリー・ウォン」と「ウォン・ジン」が並立している。
- 情報の信頼性が最も高いのは「香港影庫」のデータである。