ジャンル | ビジュアルノベル |
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対応機種 |
PC-9800 MS-DOS Windows 95/98/Me/2000/XP |
発売元 | Leaf |
発売日 |
1996年7月26日 2002年7月26日(以下02版) 2009年6月26日(以下09版) |
レイティング | 18禁 |
キャラクター名設定 | 不可 |
エンディング数 |
17(旧版修正前) 14(旧版修正後) 18(02版) 26(09版) |
セーブファイル数 |
4(旧版) 20(02リニューアル版) 80(09版) |
BGMフォーマット |
FM・MIDI(DOS版) CD-DA(Windows旧版) PCM(02版) |
キャラクターボイス |
なし(旧・02版) あり(09版) |
CGモード | あり |
音楽モード | あり |
回想モード |
なし(旧版) あり(02・09版) |
メッセージスキップ |
既読[1] 選択(09版) |
オートモード |
なし あり(02・09版) |
備考 |
Leaf Visual Novel Series Vol.2 |
『痕』(きずあと)は、1996年にLeafから発売された18禁PCゲーム。同社のビジュアルノベルシリーズ第2作。
本項目では2002年に発売されたリニューアル版(以下:2002年版)と、2009年に発売された再度のリニューアル版(以下:2009年版)についても記述することとする。
主人公の柏木耕一が大学の夏休みの間、いとこである柏木四姉妹宅で体験するサスペンスストーリー。数々の不可解な出来事から、主人公の血筋の謎や舞台である隆山の伝説の真意が明らかにされてゆく。
前作『雫』のオカルティックなイメージは継承しつつも、より深みのあるシナリオと、キャラクター設定の秀逸さで多くのファンを釘付けにした。
関連情報雑誌の人気投票では、しばらくの間上位5位以内が定位置となり、次作『To Heart』の発売以降もそれを維持し続けた。その終盤には、他のランクイン作品はすべてWindows 98以降の256色や65536色の作品である中に、PC-9800シリーズを前提とした16色ゲームが混在する状態になっていた。
2002年7月26日発売。脚本を担当した髙橋龍也と原画を担当した水無月徹は、Leafを退社済みであったために外注扱いでの参加となっており、両者が関わった最後のLeaf作品である。
2009年6月26日に『痕 -きずあと-』というタイトルで発売。キャラクターデザインは甘味みきひろが担当。主人公以外の登場人物がフルボイスとなるほか、新キャラクター「高砂六花」が追加された。
元々は2005年にPlayStation Portableで発売の予定だったが、2007年6月に「コンシューマーでは原作の大幅な改編により世界観が壊れてしまう」との理由で製作を断念し、Windowsで作り直されることになったものである[2]。
2011年12月9日にはダウンロード販売版が配信開始された。
本作は複数回プレイすることで物語の全貌が明かされるという仕掛けが施されているほか、個別ルートが解放される順番も固定されている[1]。また、シナリオ内には犯人の視点で描かれたサブシナリオも存在する[1]。個別ルートのうち、最初に解放される千鶴ルートは事件の概要を描いており、次に解放される楓ルートでは主人公たちがもつ特性「鬼の血」や前世について描かれる[1]。また、梓ルートでは真犯人の正体が、初音ルートでは「鬼の血」の真相がそれぞれ明かされる[1]。個別ルートではテーマが用意されており、千鶴ルートでは「家族愛」が、梓ルートでは「真摯な愛」、楓は「前世からの愛」、初音は「純愛」が主題となっており、いずれのテーマも事件の謎と関連している[1]。
大学生の耕一は、離れて暮らしていた父親が亡くなり、葬式に参列するために、父方の親戚である柏木家を訪れる[3]。葬儀を済ませてからも、大学が夏休みのためしばらく滞在していたが、そのうちに奇妙な悪夢を見るようになる[3]。見知らぬフローリングの床にうずくまり、自身の裡から突き上げてくる強烈な殺人衝動を必死で抑え込むという夢だった。
ある日耕一は、夢の中でとうとう殺人衝動に負け、暴力的なまでの力で、一般市民を虐殺してしまう。ただの夢だと思っていたが、翌朝のテレビで、近所の公園で猟奇殺人事件が起こったというニュースを知る。その公園は紛れもなく、夢の中で自分が暴れていた場所だった。
実は、耕一を含む柏木家の者達には「鬼」と呼ばれる存在の血が流れており、男性の場合は「鬼の血」に人格を乗っ取られるという危険があった[4]。柏木家の四姉妹の長女千鶴は、鬼として覚醒した耕一が犯行を行ったのではないかと考える[4]。一方、耕一は自分の夢を分析することで、犯人は自分ではないと考える。そんななか、千鶴の元を訪れたジャーナリストの相田響子が誘拐され、陵辱される。千鶴は耕一が犯人であると確信し、耕一を人気のない河原へおびき出した[4]。耕一は千鶴に殺されかけるが、そこに現れた千鶴は真犯人に襲われる[4]。
耕一は、自分が事件を起こしたわけではないことを知り、一安心する[4]。その後、耕一は梓とともに、彼女の友人かおりを探しに行き、真犯人と対峙する[4]。真犯人の正体は柏木家と同様に、「鬼の血」を引く者であり、「鬼」の力によって自分と耕一の精神を同調させ、あたかも耕一が犯行をしたかのように認識させていたことが判明する[4]。
かつて、この世にはエルクゥという一族がいた。彼らは人間を襲っており、人間たちからは「鬼」と呼ばれて恐れられていた[5]。ある日、エルクゥの皇族四姉妹の一人であるエディフェルが次郎衛門という人間の男を救う[5]。 二人は後に、柏木楓と柏木耕一として転生する[5]。 自分の前世を知っていた楓は、鬼の血が暴走せぬようあえて耕一と距離を置いていたものの、千鶴の助言を受けて耕一に近づく[5]。これにより、耕一の前世の記憶が蘇る[5]。 千鶴は「鬼の血」のことを耕一に話し、制御できるか試す[5]。耕一は「鬼」の力を制御できなかったため、千鶴は殺そうとするが、そこに楓が立ちはだかる[5]。
エルクゥの正体は異星人であり、彼らの一人であるリネットの裏切りによって死へと追いやられた。 リネットの生まれ変わりである初音は、父から貰ったお守りに導かれ、エルクゥたちの怨念や彼らの宇宙船が眠る場所へと向かう[5]。エルクゥたちの怨念は初音を母体にすべく、耕一の身体を乗っ取って性交を強制させようとする[5]。
PC版の声優は非公開。
2009年版のみ。
前作『雫』との接点として、同作の主人公「長瀬祐介」及びその血縁者として登場する「長瀬源一郎」と同じ姓を名乗る刑事、「長瀬源三郎」が登場する。以降、Leaf・アクアプラス大阪開発室の作品、及び東京開発室の一部の作品には必ず「長瀬」を名乗るキャラクターが登場するようになる。製作サイドからは公式に「『うたわれるもの』のゲンジマルを除く全員が血縁者」とされているが『まじかるアンティーク』の長瀬源之助は地球ではない世界の住人のためその関係は明らかで無い。
源三郎は源一郎と似たイメージを踏襲しているが、キャラクターデザインや「エリート路線からドロップアウトした妖しい中年警察官」といった設定等、『機動警察パトレイバー』の登場人物・後藤喜一の影響が加わっている。このデザイン路線は次作『To Heart』の長瀬源五郎とセバスチャンにも受け継がれ、後のPlayStation版及びアニメ版では声優として後藤喜一役の大林隆介が演じた。これは同作のヒットもあり、一般には「長瀬一族」のフォーマットとして定着した。次々作『WHITE ALBUM』はら~YOU(現・カワタヒサシ)の原画による作品だが、例外として長瀬のみゲスト原画家扱いで水無月トオル[8]がデザインしている。
旧版『痕』で、全キャラ攻略後に出現するおまけシナリオが、1979年度の講談社「星新一ショートショート・コンテスト」受賞により同年「小説現代」に掲載され、後に講談社文庫 『ショートショートの広場(1)』(編:星新一)に収録された、吉沢景介作のショートショート『できすぎ』に酷似していたことが、ネット上を中心に問題となった事件である。
Leaf側は結果的に盗作を行った事実を認め、2001年1月に店頭在庫分が自主回収され、2001年3月に謝罪文が発表された。それ以降の出荷版、及びリメイク版には当該のおまけシナリオは含まれていない。
脚本の高橋龍也は『痕』の続編について、1999年5月20日「サンケイスポーツ」紙で「いますぐということではなくて、機会があればやってみたい。僕のシリーズヒーロー像を投影してますし、多分ライフワークになるでしょう。これで会社をやめられませんね」と語っている[要文献特定詳細情報]。キャラクターもシリーズモノを意識して作っていた。しかし、高橋はその後Leafを辞め、現在のところ続編の構想は立ち消えとなっている。
以下の話はリーフスタッフが『WHITE ALBUM』発売前の1997年12月に出したコピー本[9]で、高橋と水無月が『痕2』をもしやるならということで語ったもの。ただし、会社Leafとして『痕2』の作製を計画していたわけではない。
書籍『美少女ゲームマニアックス』におけるオリジナル版のレビューでは、(2000年の時点から見れば)CGやボリュームが貧弱だとしつつも、総合的にまとまった作品として評価している[3]。
ライターの森瀬繚は千鶴のキャラクター性について、当時のエンターテインメント作品に多かった「天道かすみ」タイプの姉キャラクターでありながらも、その悲劇性から人気を集め、幼なじみなどの他のキャラクター類型に埋もれがちだった、姉キャラクターの需要の底上げを果たしたと評価している[12]。