監察官(かんさつかん、英語:Inspector General ; IG)とは、官吏等の監督査察などを担当する職名である。強制力を行使する権力的公務など、特に職務の性質上、内部の監察を要する官庁その他には監察官が置かれている。
冠称のない「監察官」という名称の職が置かれているのは枚挙に暇がないが、例えば次のようなものがある。
日本の警察における監察官は警察庁、警視庁および各道府県警察本部に設置される常設職である。警察不祥事の捜査や服務規定違反など内部罰則を犯した警察官への質疑、さらには会計監査業務に携わる。
監察の実施状況を公安委員会に報告することが義務付けられている。公安委員会は市民を代表してそれをチェックする。
首席監察官とは、警察庁、管区警察局および都道府県警察において、監察に関する事務を掌理する職である。総責任者は「警察庁長官官房首席監察官」といい、警視監。官房人事課長よりさらに上位であり、国家公務員たるいわゆるキャリアの警察官が就く。
関東・近畿・九州の各管区警察局は「総務監察部」、東北・中部・中国四国の各管区警察局は「総務監察・広域調整部」と称している。首席は警視長または警視正。
警務部監察官室に属し、階級は全員が警視以上。都道府県毎に多少の違いはあるが、警察官を捜査する監察官はその役割から、署長経験者が多い。
いわば「警察の中の警察」であり、監察官室も警務部の中に置かれる。また監察官の指揮下で、捜査対象の警察官への行動確認などを行う監察官室員は、公安警察の出身者が多いとされる。
近年監察官に対し接待や馴れ合いなどで不正との批判等を受ける事案も発生しており、上には甘く下とは馴れ合う風習ができあがっており、それがカラ監察などの風潮を生み出す原因にもなったとされる。新潟県で発生した新潟少女監禁事件の際に発覚した『賭け麻雀スキャンダル』なども、警察庁の特別監察チームを新潟県警察本部が過度に接待をしたことが原因といわれる。
警察庁の監察官は、警察庁組織令第6条で首席監察官の設置が規定されている。官房人事課監察官(定数2)は上部監察として道府県警察本部に出張することがある。官房人事課の監察は22人体制。地方機関である管区警察局の監察課・監察官は、管内の道府県警察本部にしばしば出向く。管区警察局の監察は全国で126人体制。ただし通常の監察は警視庁・道府県警察本部監察官の業務で、官房首席監察官であっても直接監察を行うわけではない。監察業務の重点方針決定、各監察官の監督が主である。警察庁長官や警視総監などの最高幹部の監察は国家公安委員会が担当することとされている。なお、警視総監は東京を管轄する警視庁の長という位置付けであるが、身分が国家公務員であるので、都知事や都公安委員会による処分・勧告などは行えず、東京都の権限では裁くことが出来ない。また同様に各道府県警本部長や主要部長も全て警視監・警視長・警視正の国家公務員であるから、知事・道府県公安委員会の権限では処分が下せない。これは消防吏員との最大の違いといえる。
伝統的に中華王朝は官吏の監察を重視しており(「監察御史」の名も隋朝から受け継がれている。)、清朝滅亡後も、中国独自の「五権」(通常のいわゆる「三権」に、官吏の採用システムたる「考試」と官吏の監察システムたる「監察」を加えたもの)を構想した孫文らからの流れを受けて、中華民国憲法(民国36年1月1日国民政府公布)でも、一章(第9章)を割いて監察院の定めを置いている。
満洲国でも満洲国国務院とは独立して満洲国監察院を置いていた。中華人民共和国でも国家監察委員会を設置している。