究極超人あ〜る | |
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ジャンル | ギャグ漫画、SF漫画 |
漫画 | |
作者 | ゆうきまさみ |
出版社 | 小学館 |
掲載誌 | 週刊少年サンデー 週刊ビッグコミックスピリッツ 月刊!スピリッツ |
レーベル | 少年サンデーコミックス ビッグスピリッツコミックススペシャル |
発表期間 | 週刊少年サンデー連載: 1985年 - 1987年 その他: 2010年、2012年、2015年、 2017年 - 2018年、2020年 - |
巻数 | 単行本(少年サンデーコミックス)全9巻 ワイド版全4巻 文庫版全5巻 単行本(ビッグスピリッツコミックススペシャル) 既刊10巻(2018年8月現在) |
話数 | 連載:全100話 特別編・続編:11話(2021年8月現在) |
OVA | |
監督 | 知吹愛弓 |
キャラクターデザイン | 杉山東夜美 |
メカニックデザイン | 佐山善則 |
アニメーション制作 | スタジオこあ |
製作 | バンダイ、メディアリング、小学館 |
発売日 | 1991年 |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | 漫画 |
ポータル | 漫画 |
『究極超人あ〜る』(きゅうきょくちょうじんあーる)は、ゆうきまさみによる日本の漫画、またそれを原作としたOVA。第19回星雲賞マンガ部門受賞。2012年11月時点で累計発行部数は430万部を記録している[1]。
週刊少年漫画雑誌『週刊少年サンデー』(小学館)にて、1985年から1987年にかけて連載された(昭和60年34号 - 昭和62年32号)[2]。単行本は小学館から少年サンデーコミックス全9巻、同ワイド版全4巻、小学館文庫全5巻が刊行されている[2]。2018年にはビッグスピリッツコミックススペシャル版がBOX1(1 - 5巻)、BOX2(6 - 10巻)のセットで発売され、10巻に関しては単独でも発売された。その後、BOX版の1~9巻も単独で発売されている。
他のメディアでの展開はその項を参照。
私立春風高校を舞台に「光画部」(こうがぶ、一般にいう写真部)に属する生徒・OBたちとその周辺で起きるさまざまな珍妙な(ある意味非常識な)出来事を描いた学園コメディ漫画。それまで部活動をテーマにした作品は体育会系のクラブ活動を熱く描くものが多かった中、派手な活躍の場が少なく、比較的地味とされていた文化系クラブにスポットライトを当てた。社会的には変人に分類される個性的な生徒や人々の感性や生態をユーモアをこめて肯定的に描いている。
本作の舞台である春風高校はごく普通の学校だがどこか変な人が集っており、中でも光画部は(OBも含めて)特に個性豊かな人々が集まっている。(一応)主人公であるR・田中一郎は、マッド・サイエンティストが世界征服のために作った、(あらゆる意味で)人間同等のアンドロイドという非常識極まりない存在であるが、登場人物たちにあっさりと受け入れられているばかりでなく、周りのあまりにも非常識な人々の前では、非常に影が薄い。作品中には当時の時事ネタや特撮・アニメネタなどが豊富に織り込まれており[2]、解る人は大笑いし、解らない人にも何となく笑えてしまう話の作りが人気の源である。
人間と同等のアンドロイドが実在するという点においてはSFに分類されるが、それが日常のものとして受け入れられているという意味ではエブリデイ・マジックの要素も持ち合わせる。
2010年、作者・ゆうきまさみ画業30周年を記念した様々な企画の一つとして単行本『ゆうきまさみ年代記』が発売され、描き下ろし読切「究極超人あ〜る EVOLUTION」が収録された。『究極超人あ〜る』がストーリーのベースになっており、そこに『鉄腕バーディー』のバーディー&つとむや『機動警察パトレイバー』の泉野明などの歴代ゆうきキャラが登場する。
連載終了から25年後の2012年には、『週刊ビッグコミックスピリッツ』49号で読切短編「究極戦隊コウガマン劇場版3D」が掲載された。これは前年に発生した東日本大震災の復興支援を目的としたチャリティー企画「ヒーローズ・カムバック」の一環として行われており、2013年4月30日に同企画の作品をまとめた単行本『3.11を忘れないために ヒーローズ・カムバック』を発売し、諸経費を除いた収益が寄付された[3][4]。
2015年、作者の画業35周年を記念した企画が小学館の雑誌で行われ、その中で『あ〜る』関連の企画も行われた。『月刊!スピリッツ』10月号に「『究極超人あ〜る』ほぼ週めくり!?“あ〜る”な究極カレンダー」が特別付録として添付され、前後編の新作読切の前編が『週刊ビッグコミックスピリッツ』42・43合併号[5]、後編が『月刊!スピリッツ』11月号に掲載された[注 1]。以降も続編が『ビッグコミックスピリッツ』で不定期に掲載されている。
「Rグルメしませうの巻」以降の読切は『サンデー』連載終了後からの続編(作中では1987年秋ごろ)となっているが、連載終了後の現実の事象[注 2]についても触れる描写が見られる。
連載終了後の新作をまとめた単行本は、既刊少年サンデーコミックスから続き番号となる第10巻として2018年8月10日に発売された(ただし、ビッグコミックススペシャルからの刊行のため判型は異なる)。また、第9巻までのビッグコミックススペシャル版と第10巻を5巻ずつセットにして、描き下ろしイラスト、限定ファンブックなども収録した『究極超人あ〜る 完全版BOX』が7月・8月の2か月連続で発売された[7]。
2020年9月14日、ゆうきまさみ画業40周年を記念した企画が『週刊ビッグコミックスピリッツ』42・43合併号で告知された。同年12月に初の大規模となる展示イベント「ゆうきまさみ展」を東京・東京ドームシティ Gallery AaMoで開催すると発表した。また、本作品の主人公、R・田中一郎の等身大フィギュア、春風高校光画部部室を再現するクラウドファンディング企画が始動することも併せて発表された[8]。
同年10月、『スピリッツ』47号(17日発売)に新作読切(2010年のクロスオーバー読切の続編)が掲載された。なお、同誌では同年7号から『新九郎、奔る!』が移籍連載されており、これ以後『あ〜る』掲載号は同作との2本立てになっている。47号では雑誌表紙に同作主人公の伊勢新九郎とR・田中一郎が並んで描かれている。また、クロスオーバーにも新九郎が1コマだけ登場している。
2021年8月、『スピリッツ』36・37合併号(10日発売)に続編が掲載された。
『週刊少年サンデー』連載終了後に発表された読切作品を以下にまとめる。初出に号数のみ記載の場合は『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載である。なお、掲載時間の開きを作中でネタにしつつも作中の時間軸は1987年である。
発表順 | 単行本内での話数 | 単行本でのサブタイトル | 初出時のサブタイトルまたはタイトル | 初出 | 他書籍への収録 |
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単行本 第10巻収録 | |||||
1 | 第9話 | 究極超人あ〜るEVOLUTIONの巻 | 究極超人あ〜るEVOLUTION | 単行本『ゆうきまさみ年代記』(2010年) | |
2 | 第8話 | 究極戦隊コウガマン劇場版3Dの巻 | 究極戦隊コウガマン劇場版3D | 2012年49号 | アンソロジー『ヒーローズ・カムバック』 |
3 | 第1話 | Rグルメしませうの巻(前編) | 2015年42・43合併号 | - | |
4 | 第2話 | Rグルメしませうの巻(後編) | 『月刊!スピリッツ』2015年11月号 | ||
5 | 第3話 | またなにかたくらんでる!の巻 | 2017年34号 | ||
6 | 第4話 | W選挙の巻(その1) | W選挙の巻 | 2018年2・3合併号 | |
7 | 第5話 | W選挙の巻(その2) | 続・W選挙の巻 | 2018年4・5合併号 | |
8 | 第6話 | W選挙の巻(その3) | 2018年33号 | ||
9 | 第7話 | 光画部は懲りない!の巻 | 2018年36・37合併号 | ||
単行本化未定 | |||||
10 | - | - | 究極超人あ〜るEVOLUTION | 2020年47号 | 単行本『ゆうきまさみロングインタビュー WITH A LITTLE BIT OF LUCK』(2021年) |
11 | - | - | どっこいしょの巻 | 2021年36・37合併号 | - |
2016年2月、バレンタインデーのエピソードを描いた「14日の土曜日」の巻で、椎子がRに贈ったハート型のせんべいをモチーフにした“究極超人あ〜る メモリアルせんべい”がナタリーストアで販売された[9]。ただし、この製品はバレンタイン当日の14日を過ぎてからの発送であった[10]。
連載終了から30年を経た2017年4月、アクションフィギュア『figma R・田中一郎』が発売された[11]。
もともとこの漫画は全くの創作というわけではなく、その舞台は都立板橋高校の光画部[注 3]をモデルにしている。これは、ゆうきまさみの友人である音楽ディレクター・とまとあきの出身校であり所属クラブである。
また、Rに関してはその光画部の後輩の"成原"(ナリゲンと読む。成増に住む原人の意。とまとあきの3年下)が直接のモデルである[12]。ただし、Rの性格的な部分については"成原"と"じっちゃん"という別の光画部後輩の2人の変なところを足して3倍にした感じであるとのこと[13]。
それ以外にも、ゆうきの友人・知人をモデルにしたキャラクターや、明らかにモデルがわかるキャラクターが多数登場する。
ゆうきの友人・知人をモデルにした例:
芸能人・著名人をモデルにした例:
両者に当てはまる例:
また、この漫画にはいたるところに特撮やその当時の時事ネタを基にしたパロディがちりばめられている。例えば、さんごの苗字「大戸島」はゴジラが初めて出現した島の名前である[2]。
台詞が時々、第二次世界大戦前を思わせるものになる(「なんでしょう?」→「なんでせう?」など)のも特徴の一つである。連載当初は誤植と思われないよう、現代仮名遣いのルビが振られていた[注 7]。
舞台である春風高校は、東京都練馬区の桜台と羽沢の間にある架空の町・諌坂町(いささかちょう)に戦前から存在している私立高校という設定であり、実在はしない。同地域一帯は「なんの変哲もない、とても平均的に普通な、ありがちな東京の住宅街」であり、作品の主流を形成する雰囲気を成立させる要因の一つとなっている。諌坂町の所在は、2010年11月に小学館から発売された『ゆうきまさみ年代記』により、明らかにされた(春風高校校歌にも「環七陸橋跨いで眺む京王ビルから…」とある)。また、本編中では西武池袋線に「いささか(東京都練馬区諌坂)」という架空の駅が江古田駅と桜台駅の間に存在している[注 8]。
春風高校が存在するとされた練馬区内に、実際の同名の高校は存在しないが、区内の光が丘には「春の風小学校」という区立小学校がある。また、茨城県かすみがうら市にはつくば国際大学東風高等学校(東風をはるかぜと読む)が存在するが、この高校が前校名から現校名に改名されたのは、当該項目作品の連載終了より後の時代である。
単行本第2巻で光画部の発行の雑誌「RanRam(乱々)」を各クラスに24部配布し、生徒会長選挙での投票数が966名であることから、各学年8クラス、クラス定員40名以上、全校生徒1,000名弱の学校規模であることが推測される。校長の夫人が理事長を務めている。作品登場人物である西園寺まりい・えりか姉妹の父親も理事の一人ではないかとする読解があるが、詳細は不明である。
作品内では、陸上短距離のインターハイ優勝経験者がいたり、中学野球で全国制覇を果たした曲垣が甲子園出場を目指して入学してくるなど、運動部の活動は活発なようであるが、実績は残せていないようである[注 9]。それと並行して、光画部を始めとする様々な文化部が自由奔放に活動するリベラルな校風も持ち合わせている。
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声優の後ろの記号は登場メディアの違い(ミニドラマは「D」、OVAは「A」)を表す。
一般でいう写真部のこと[注 10]。
光画部に所属する部員は、現役とOBが入り交じっているため、ここでは入学年度にあわせて同学年ごとに紹介する。Rと小夜子については転入生であるためその年度の入学生ではないが、ここでは便宜上該当年度の入学生として扱う。なお、役員経験者には別に役職名を示す。
連載終了後の読切シリーズでは、新部長に関してムダに揉めた末に3人が週代わりで部長を務めることとなる。
春風高校の文化系クラブによる連合組織。参加クラブは、漫画研究会、文芸部、映画研究会、演芸部、光画部、超常現象研究会、鉄道研究会(順不同)。まりいにより部費の削減を断行された文化系クラブが、生徒会に対抗するために組織された。組織結成の提唱者は、漫画研究会部長の有島。
通称「土研(どけん)」。春風高校のクラブの一つ。部費は生徒会に一切依存せず、春・夏・冬休みの「合宿」と称する土木工事のアルバイトによって捻出しているため、生徒会も内部干渉できない。また就職率100%を誇り、「春風高校最強のクラブ」と呼ばれている。なお、土木研究会の歌も存在する。
電子書籍の1~9巻は少年サンデーコミックスに準拠
本作は漫画以外のメディアでもその世界を展開している。イメージソングはインストゥルメンタルを含めれば実に30曲以上が制作されており、これは当時の他の漫画にはあまり見られない現象である。作者のゆうきまさみが音楽ディレクターとまとあきと長年の友人だったことから、その伝でゆうき自身がファンだったという作曲家山本正之にイメージソング(コウガマンの主題歌)の作詞・作曲を依頼し、それならついでにと、とまとが参加していたワーナーパイオニア「イメージカプセル」シリーズ(当時)からアルバムリリースを打診され、その勢いで数々のイメージアルバムが完成した。例えば、春高校歌は3日[15]で歌詞ができた。
最初の打ち合わせが1986年9月15日。ここから主要キャストとして招聘する声優の一部にゲリラ的な出演依頼が行われた。例えば塩沢兼人はたまたまタクシーに乗り込む際、いきなりとまとあきが一緒に乗ってきて、その場で『あ〜る』のコミックスを渡されて「これやってくれませんか?」と依頼されたという。また、特別ゲストとして校長先生のモデルである春風亭柳昇が招聘された。
翌1987年2月に発売された、最初のアルバムは製作期間2週間であるが、これがワーナーパイオニアの社内で「ヒット賞」を受賞するほどのセールス実績となり、ひいては当時低調だったイメージアルバム市場が息を吹き返すきっかけともなった。
このヒットを受けて、1987年6月にイメージアルバム第2弾が発売、続けて『究極超人あ〜る どらまSPECIAL』が制作・発売された。『どらまSPECIAL』はアニメ雑誌で脚本の伊藤和典が「2000円のアナログミュージックテープのみで8月25日発売」という情報を書いたが、直前で方針変更され、1987年9月10日に延期されアナログカセット・LP(2000円)ならびにCD(2500円)で発売された。「究極戦隊コウガマン コウガピンク危機一発!!の巻」で「裏返ったなA面B面!」というギャグが出てくるのは、当初のアナログカセットテープ版のみという企画を反映した名残である。この作品については、ワーナーパイオニアで1987年8月末-9月頭のリリースアイテムが無い[注 65]という事情から急遽企画されたアルバムであったことも一因となり、製作期間中に方針変更などの混乱があった模様である[25]。
これらイメージアルバム中にはプロの有名声優とゆうきまさみ本人やその友人を主体にした業界人の“素人声優”が入り混じって演ずるミニドラマも多数収録されており、これが後年のOVA企画への足がかりになった。なお、ゆうきたち“素人声優”はノーギャラでの出演で、これは第1弾において本来は低予算の小規模作品であったことを顧みずに人気声優を次々と出演させた上、特別ゲストとしてベテラン落語家の柳昇まで招聘したことから、そのギャラが制作費を圧迫してしまい、そのため行われた窮余の策であったものの、元々ゆうきらには『魔法帝国ドロント』という同人サークルでの本格的なオーディオドラマの制作経験があり、それが活かされた形になった。第1弾・第2弾のライナーノートには「協力:DORONT」の表記がある。なお、後年のOVAでは全キャラクターが声優によって演じられている。その一方で原作における1987年度入学の光画部部員はイメージアルバムおよびOVAには一切登場しない[注 66]。その理由は、キャラクターを多く登場させると会話が複雑になっていき、結果的に収拾がつかなくなる懸念から「ベンジャミンらは出さない」という伊藤和典の方針によるものである[26]。
また、このOVAも好評であったことから、R・田中一郎の声を担当していた塩沢兼人が不慮の事故で急逝するまでは、テレビアニメ化という噂も何度か上がったことがある。しかしゆうき自身は「この作品は会話劇であり、アニメになると台詞の間の取り方が難しくて面白くならない。音楽と歌を先に作って後から絵をつけたものが最も適した手段ではないか」として[27]、アニメ化はかたくなに断っていた。その様な状況の中でOVA企画が実現したのは、アニメーションの実制作をゆうきと旧知の間柄である[注 67]知吹愛弓が率いるスタジオこあが担当していたという事情があった。
イメージカプセルレーベルにおいてアルバムとして制作された漫画原作の作品群については、主要制作スタッフが共通していることから、起用される作曲家や歌手、構成[注 68]などに共通点が多い。特にドラマを収録した作品では、同じイメージカプセルの他作品の曲をBGMとして(場合によっては歌入りの曲から歌を抜いて)流用する例が多い。山本貴嗣『エルフ17』や柊あおい『星の瞳のシルエット』からは当作に、逆に当作からはあろひろし『優&魅衣』に曲が流用されている。また『超新星フラッシュマン』のBGMも『あ〜る』『優&魅衣』に流用されているが、これは田中公平が前三者いずれの作品も担当していたため。
2005年12月21日には『究極超人あ〜る』と『究極超人あ〜る vol.2』が、2007年3月21日には『どらまSPECIAL』から『アニメオリジナルカラオケ3』までが、「ANIMEX Special Selection」シリーズの一つとしてデジタル・リマスタリングされた上で再発された。