空気ブレーキ(くうきブレーキ、英語: Air Brake、compressed air brake、エアブレーキ)とは、空気を利用したブレーキ(制動装置)の一種で、圧縮空気でブレーキシリンダを動かしブレーキをかける装置である。供給源としては、コンプレッサーでエア・タンクに詰めた圧縮空気を利用することが多い。排気ブレーキとは異なる。
液圧を用いたブレーキに比べ大きな制動力が期待できるため、鉄道車両や中型・大型のトラックやバスのブレーキに使用される。ブレーキを解除するとブレーキシリンダーやエアチャンバーに溜まっていたエアーが抜けるので鉄道車両ではシューッもしくはヒューッ、自動車ではプシュッというエアー音がする。
液圧ブレーキと異なり、陸上である限り存在する「空気」を外部から取り入れてブレーキの圧力媒体として用いており、この点において信頼性が高い方式といえる。しかしながら、ブレーキ管に破損があった場合、圧力が失われてブレーキが原則的に失効するのは同様である。そこで、複数の車両を連結して用いる鉄道車両においては、ブレーキ失効対策として様々な機構が施されている。
鉄道車両においては、空気圧縮機により「元空気溜」(もとくうきだめ)と呼ばれるタンクに圧縮空気を溜めておき、運転席のブレーキ弁により、ブレーキ力を制御するのが基本である。鉄道車両は編成を組み多数の車両が連なった状態で運転される場合が多いことから、連結が外れるなどの異常事態を想定し、様々な対策が取られている。以下、主な機構について述べる。詳細は各記事を参照のこと。
このうち、電気指令式ブレーキは、空気ブレーキのほか、電車やハイブリッド気動車では発電ブレーキや回生ブレーキ等の電気ブレーキを、液体式気動車では排気ブレーキやリターダを統合して制御するシステムであり、他のブレーキシステムとは趣旨を異にする。
自動車においては、中型以上のトラック・バスに用いられている方式である。イギリスやドイツなどの欧米ではほとんどフルエアブレーキを採用しているが、日本では応答性に優れて制動力をコントロールしやすいという理由で、油圧ブレーキと空気ブレーキの長所を組み合わせた空気油圧複合式ブレーキ(エアオーバーハイドロリックブレーキ:AOH)が用いられるが、大型車(GVW12トン以上の大型観光バスや路線バス、トラック、トレーラヘッド等)は、ウェッジ式フルエアブレーキや、フルエアディスクブレーキへの転換が進んでいる。トレーラー(台車)は昔からSカム式フルエアブレーキが採用されている。
フルエアブレーキの仕組みは鉄道車両でいえばセルフラップ式の直通ブレーキに該当する。一般にエアコンプレッサーを搭載しており、エアタンクに圧縮空気が常に貯められている。ブレーキを踏むと、リレーバルブを介し、直接ブレーキを作動させるブレーキチャンバにエアが送られる。それで、チャンバのロッドが伸び、ブレーキが掛けられる。ブレーキ管が外れたり損傷したりした場合には、まったくブレーキが効かなくなるため、通常2系統になっており、前軸グループと後軸グループで配管がわけられることが多かったが、「中期ブレーキ規制」の施行以降は「完全二重化」が義務付けられている。バタ踏み操作(ブレーキの踏み込み・ゆるめ操作を短時間に複数回行う事)を行うと、圧縮空気を大量消費してしまい、制動力が極端に低下してしまう。 エアブレーキのバタ踏み操作でエアを浪費して制動力が低下したために発生した事故が2件発生したことを受け、国土交通省は2013年(平成25年)6月28日にエアブレーキの操作に関して注意喚起を行い[2]、同時にいすゞ自動車・日野自動車・三菱ふそうトラック・バス・UDトラックスの大型車メーカー4社も、連名で注意喚起を行った[3]。
日本の積載量4トン級トラックの場合、ほとんどの車種がAOHブレーキを採用している。また、日野・レンジャー、いすゞ・フォワード、いすゞ・フォワードのOEMであるUD・コンドル(5代目)では、床から踵を上げて操作する「ペンダント(上吊り)式ブレーキペダル(プロコントロールペダル)」を採用しているため、特に車両が揺れているときの丁寧なブレーキ操作には慣れが必要である(三菱ふそう・ファイターと4代目までのUDトラックス・コンドルはオルガン(床置き)式ペダルである)。
大型車のパーキングブレーキは、従来トランスミッションの後方にプロペラシャフトと同軸で設置されていたが(センターブレーキ)、法改正により、ホイールブレーキを直接固縛する、ホイールパーク式パーキングブレーキへ移行した。これは圧縮空気の圧力低下した場合パワースプリングでブレーキが掛かった状態になり、通常走行時にはエアを込めて解除するものである。そのため、ブレーキをかける際に大きなエア音がする。