この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2024年6月) 翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
職場いじめ(しょくばいじめ)は、職場における同僚や上司などによるいじめのこと。タイプによってモラルハラスメント(精神的ハラスメント)、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントと呼ぶこともある。21世紀に入り、日本や欧州を含む各国で注目され始めた。
職場いじめは、いじめる側がグループを組んで、嫌がらせを行うことが多い[1]。そのため、状況が複数対一人という不利な状況に陥りやすい[1]。
また、いじめる側が上司などの場合、話し合いの場などで「あれは指導」と答えて会社または団体側に責任はないとするケースがほとんどといった状況で、会社または団体側も一部の責任者が勝手にやったということで片付ける場合も多い。これは、いじめの定義が難しいことも影響している[1]。
また社員同士だけではなく、派遣先の従業員が派遣労働者に対していじめや差別・冷遇を行うケースも多い。本来、派遣労働者やパートタイム労働者雇用形態が違うだけで立場が低いということはないのだが、日本では正無期雇用の従業員又は派遣先の従業員やアルバイト労働者、パートタイム労働者という風潮が根強く、事件性がない限りは黙認されることが多い。(アルバイト、派遣社員の項目も参照)
「あれは指導」と答えて会社または団体側に責任はないとするケースがほとんどとされるが、あっせん(個別労働紛争解決制度)でいじめを原因とした相談件数が増加するなど、職場いじめは企業にとってもリスク要因となりつつある[2]。
日本産業カウンセラー協会が行ったアンケート調査(調査対象440名)では、以下のとおりとなっている[3]。
21世紀職業財団が2004年3月に行った「職場におけるハラスメントに関するアンケート」(回収数638社、回収率18.8%)によれば、
以上の状況が、調査返送の企業で見られた[4]。
いじめの原因としては、解雇・免職等制限によって解雇・免職等が困難な場合にその代替的手段としていじめが用いられる組織(維持)的原因によるものと、職場での職務上または人的関係上の優位性保持のための非組織的個人的原因によるものとに分かれる。いずれにしても、これらの目的を達成するまで継続的に行われるものであり、いじめの対象者の精神的・肉体的負担を強いるものであり、目的の達成いかんに関わらず、いじめの対象者の心的外傷後ストレス障害への罹患可能性と、いじめの実行が複数人に及ぶ場合の首謀者以外の者の精神的荒廃と常識感覚の鈍化・消失、および、職場のモチベーションの低下は避けられず、多面的・総合的解決が望まれるものである。具体的に認識されている例としては、いじめる側が、いじめる対象に対し何らかの感情(多くは脅威と見なす)を持つと、いじめに走りやすい[1]。背景には、「職場環境に弱肉強食の理論が持ち込まれてしまっている」といった指摘や立場の弱い人間への蔑視・軽視・利己的な態度や屈従させるような態度などがある[3]が、このため、いじめは「強迫的」なアプローチを以って行われ、対象者にその効果を強く印象付けようとして、継続的/断続的/突発的など様ざまなタイミングで行われる。インターネット・イントラネットの普及している今日では、複数人でいじめを実行する場合、その指示がパソコンのメール等を活用して行われることもある。また、目的を達成するために、違法な情報収集(個人情報保護法違反等)が行われ、この過程で別件により、たまたま、いじめが発覚することもある。 ちなみに、いじめられやすいタイプには以下のようなものがあるとも言われる。
また、女性による女性へのいじめについては、
とする意見がある。
会社または団体には労働者が快適に働けるように職場を管理する義務が存在する。会社または団体は労働者が働きやすいように職場環境を安全・快適に保つ必要があり、このことを日本では職場環境配慮義務と呼ぶ。
セクハラが男女雇用機会均等法によって規制、意識の浸透が行われたことから、職場のいじめを少なくするためにパワハラも法律による規制が必要、と言う意見があった[3]。そのため、厚生労働省はパワハラも企業が防止策を義務付ける法律を定めることを決めた[5]。そして、2018年(平成30年)12月8日、厚生労働省はハラスメント行為を「許されないものである」と明記する方針を固めた[6]。行為自身を禁止にすることは見送られるが、抑止効果に繋げる狙いがある[6]。
他には、管理職に研修によって教育を行う必要性もあげられている[3]。
ただし、管理職自らが率先してイジメを行っているケースも多数見受けられる為[注釈 3]、この場合には効果は全く期待できない。
いじめが続く場合の対処方法は、
なお、解雇・免職等が困難で、その代替的手段として職場のいじめが行われている場合は、社会経済状況の企業等への影響もあり根本的な解決は難しいが、企業等の業績は、第一次的・直接的には経営者および経営側の責任であり、その責任転嫁として、職場内のいじめ、更に職場外の付きまとい・嫌がらせが行われているときは、一般的な民事上および刑事上の責任が別に発生することになる。
厚生労働省では、職場のいじめ・嫌がらせ問題について、都道府県労働局や労働基準監督署等への相談が増加を続けるなど、社会的な問題として顕在化してきていることをうけて、当該問題の防止・解決に向けた環境整備(労使を含めた国民的な気運の醸成)を図るため、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議[7]」を開催している。第1回は2011年7月8日に開催された。[8]
欧州では、EUの2001年に欧州議会が欧州委員会に宛てて職場いじめへの対策を求める決議を行った[9]。
欧州議会の報告書によれば、約8%(報告書当時で、約1200万人)の労働者がいじめを受け、職場におけるストレスや欠勤などの経済損失が生じているという(この報告書では、いじめを暴力、セクシャルハラスメントとは別のものとして定義している)[9]。法制面については、既存の指令がある程度の部分をカバーできるとした上で、心理面へのフォローを提案している[9]。別の調査では、働く人間の4割が職場いじめを経験しているという結果もある[10]。
欧州の各国の対応状況については、以下のとおり。なお、法律名については、出典で使用されている名称を使用した。
職場いじめを訴えた場合の挙証責任については、被害者側により求めるケースが多いが、加害者側に求めるケースもある[11]。これについて、「被害者側の負担が大きいから、加害者側にも責任を課す規定が必要である[11]」、「加害者側に求める場合、「いじめがあったと訴えること自体がいじめになる」として慎重な対応を求める」(前述の欧州議会の報告書)[9]といった意見を一例として記載する。