1822年のTransactions of the Cymmrodorion, Or Metropolitan Cambrian Institutionでは、芝の迷路やクノッソスの硬貨に描かれている迷路は、古代の太陽崇拝者が考えた太陽の道に関連しているとした[11]。
1858年、ウィリアム・H・マウンジー(英語版)は1740年に出版されたウェールズの歴史書、Drych y Prif Oesoeddの中にある、昔ウェールズの羊飼い(英: shepherd)の間で行われていた奇妙な習わしの記述に注目した[11]。この習わしでは、芝に「caerdroia」すなわちトロイの壁または城塞と呼ばれる形の迷路を刻む[11]。マウンジーは、この名前はトロイの都市を意味する「caerdroia」と曲がりくねった都市を意味する「caer y troiau」が似ているとして、ウェールズ人由来の後付けの名前だとする暫定的な結論を出した[11]。これに対し、エドワード・トロロープ(英語版)はこの迷路がイングランド中に広く分布している点に言及し、古代のウェールズ人に由来するものであれば、少なくともその痕跡が発見されると思われるブルターニュにまったく存在しないのはなぜかと指摘した[12]。加えて、「トロイの町」の名称はテューダー朝の時代に初めて付けられたもので、伝説のトロイになぞらえ、中心部へ到達するのに乗り越えなければならない困難を示す目的で使われた言葉だと述べている[13]。トロロープは芝の迷路を元々は教会関係者が懺悔のために作ったものであるとの見解を示しており、この見解は彼の死後も否定されていない[13]。トロロープはこの主題に関する学術報告の中で、聖アンナの丘の迷路に、服を着てひざまずいた2人の人物が懺悔のために巡回している様子を描いたスケッチを模写している[13]。しかし、トロロープの結論は推論であり、直接的な証拠は存在しない[13]。
1849年に出版されたG・N・ウェットンのWetton's Guide-book to Northampton and Its Vicinityには、この迷路は放置された状態であると書かれている[16]。しかし、1860年にジョン・ナッソー・シンプキンソンが書いた小説The Washingtonsには、次の一節がある[16]。
ノース・ヨークシャーのリポンにも以前はシェパーズ・レースに似たデザインの迷路があったが、1827年に耕された[18]。アセンビー(英語版)には同じデザインの迷路が保存されていたが消滅した[18]。1908年に出版されたEarthwork of Englandの中で、アーサー・ハドリアン・オールクロフトは、アセンビーの迷路について、それは「妖精の丘」と呼ばれる丘の頂上の窪みに沈んでおり、廃墟染みた状態でほとんどの人には知られていないが、知っている人は夏の夜に迷路を歩いて「妖精の歌声を聴くために」中央にひざまずいたと語っている[18]。
ヨークシャーの古物商であるエイブラハム・ドゥ・ラ・プライム(英語版)の書いた日記には、「ジリアンズ・ボア」の名でこの迷路に関する記述が存在する[19]。日記には、ブリッグ(英語版)に向かって約9.6キロメートル離れたアップルビー(英語版)にある「トロイの壁」と呼ばれる迷路に関しても書かれている[19]。彼はこの2つの迷路を古代ローマの時代の気晴らしだと説明し、「地面に切り取られた大きな迷路とそれを囲むように築かれた丘に過ぎず、観客はその周りに座ってスポーツを見ていた。」と述べている[19]。アップルビーの迷路はそこを通るローマ街道の近くにあったが、長い年月を経て消滅した[19]。1834年にトマス・アレン(英語版)がリンカンシャー[注釈 5]の歴史を記したThe History of the County of Lincolnが出版された時には、すでにその痕跡は残っていない[19]。
キングストン・アポン・ハル近くの迷路は、外形が十二角形で、直径約12メートル、幅約36センチメートルの草の道で作られていた[20]。その設計はアルクバラのジュリアンズ・バウアーと似ているが、道は曲線ではなく直線だった[20]。これは「トロイの壁」と呼ばれている[20]。1815年のルドルフ・アッカーマン(英語版)のThe Repository of Arts, Literature, Commerce, Manufactures, Fashions and Politicsには、この迷路のカラーイラストが掲載されている[20]。
^坪内逍遥訳の『眞夏の夜の夢』より要約。原文は「The nine men's morris is fill'd up with mud; and the quaint mazes in the wanton green, for lack of tread are undistinguishable.」。冒頭は草地に刈り込まれた泥だらけのナイン・メンズ・モリスのゲーム盤を指している。
^原文は「He had just been treading the 'Shepherd's Labyrinth,' a complicated spiral maze traced there upon the turf; and was boasting of his skill, how dexterously and truly he could pursue its windings without a single false step, and how with a little more practice he would wager to go through it blindfold.」。