造影剤(ぞうえいざい)とは、画像診断の際に画像にコントラストを付けたり特定の組織を強調して撮影するために検査対象者に投与される医薬品である。組織そのものの写り方が変わるのではなく、生体組織とは写り方が大きく異なる物質を取り込ませることで、画像上その組織の写り方が大きく変化したように見えるのである。つまり、例えばX線を用いた撮影においてはX線をよく遮蔽する物質が使われる。いずれにしても生体に与える副作用の少ない物質が造影剤として選ばれ、ヨウ素化合物、バリウム化合物、ガドリニウム化合物、二酸化炭素などが用いられる。
あらゆる物質は、それに対する生体のアレルギー反応を起こしうる。造影剤も例外ではなく、アナフィラキシーショックを起こすリスクは他の薬剤に比べやや高い。なお血管に投与するタイプなどの一部の造影剤は、体内に投与されると体が熱く感じるが、これは血管が広がり血行が良くなることにより起こるためで、問題はない。
ヨード造影剤は大部分が尿中排泄され、主に血管収縮による虚血と近位尿細管障害により腎毒性を引き起こす。特にイオン性のものは浸透圧性が高く、非イオン性より腎臓に負荷がかかりやすいとされている。
アナフィラキシーショックの呈する症状が激しいのに対し、こちらは個別の症例で予後に対する影響が緩やかであるために見過ごされて来た。2000年代になって大規模かつ長期の疫学調査により、特に重症患者において生命予後を数%とは言え有意に低下させることが示され、注目を集めるようになった。造影剤関連急性腎障害とも呼ばれる[4]。
一過性の甲状腺機能亢進症を発症することがある。
生理食塩水による補液、アセチルシステインによる解毒、重炭酸による腎機能の維持などが提唱されているが、本症自体が大規模な疫学調査によって初めて示された疾患であるので、有効性の立証も困難であり、論文によってその有効性の評価は分かれている。また病院によっては副作用予防のために撮影前にコップ1杯分の水を飲むように指示されることもある。