陸閘(りっこう、りくこう)とは、河川等の堤防を通常時は生活のため通行出来るよう途切れさせてあり、増水時にはそれをゲート等により塞いで暫定的に堤防の役割を果たす目的で設置された施設。
扉を人力や動力で閉じる方式や木板等をはめ込む方式など様々な方式や規模のものがある。天井川のある地域や海抜ゼロメートル地帯、港湾部に多数存在する。津波や高潮を防ぐ海岸線の堤防・防潮堤にあるゲート(防潮扉)についても陸閘と呼ばれる。
陸閘のうち両側の柱に縦溝を刻み、その溝に角材や木板を積み重ねてはめ込んで堰としたものを、特に角落し(角落とし:かくおとし)という。
太平洋沿岸の漁港などでは、防潮堤の開口部からの津波や高潮の進入を防ぐ防潮扉として陸閘を用いている。津波や高潮襲来時には迅速な閉鎖が求められることから、所管する国土交通省および農林水産省では、緊急時の陸閘操作体制強化と、水門・陸閘の自動化・遠隔操作化を推進してきた[1]。
宮城県では2004年にとりまとめた「大規模地震時における津波防災対策」において、当時県が管理していた陸閘585基のうち「角落とし」タイプ260基について、82基を鉄製横引きゲート化、55基を完全閉鎖(廃止)し、残る233基について常時閉鎖するなどの対策を取り、閉鎖作業を担当する沿岸の消防団では、分刻みの作業マニュアルを整備するなどの対応を取っていた[2]。
しかし2011年に発生した東日本大震災では、陸閘そのものの倒壊流失以外に、停電などで遠隔操作ができず閉鎖できなかったり、閉鎖作業にあたった消防団員が作業に手間取り、津波に巻き込まれ殉職するケースが相次いだ[3]ことから、津波対策を取る各自治体では、水門や陸閘の常時閉鎖および津波到達までの時間が少ない場合には消防団員らに閉鎖させない、などの対応を決めている[4]。