『青い麦』(あおいむぎ、原題 : Le Blé en herbe)は、フランスの女性作家シドニー=ガブリエル・コレットによる1922年の小説である。
少年と年上の女性の関係を描いた本作は、著者コレットの夫の連れ子ベルトラン・ド・ジュヴネルの存在からインスピレーションを得ていると言われる。ベルトランによれば、彼がコレットに語ったモン=ドールの避暑地での体験が着想の元になっている。コレット自身いわく、元来はコメディ・フランセーズのための企画で、「暗い舞台の上で繰り広げられた恋愛劇の主役が、明るくなってみたら少年少女だった」という筋書きで観客を驚かせる趣向だったらしい[1]。
1922年2月から1923年3月まで、断続的に『ル・マタン』紙に連載された。掲載分はフィリップがダルレー夫人の誘惑を受けるところまでであり、残る後半を書き下ろして1923年7月に刊行された。そのため一話ごとの区切りをつける必要のなくなった後半からは、よりまとまった構成になっている[1]。
本作はロズ=ヴァンの別荘で書かれたため、その別荘への道は「青い麦の道」と呼ばれるようになった[1]。
フィリップ(フィル)は16歳、ヴァンカは15歳。幼馴染のふたりは今年の夏も両家族合同で海辺の別荘を訪れていた。しかし大人に近づきつつあるフィルは、もう以前のように無邪気にヴァンカに接することができない。
そんな彼の前に現れた、美しいダルレー夫人。彼女の魅力に惹きこまれたフィルは、その関係を悟られまいとしてますますヴァンカとの間の溝を深める。
パリに帰っても密会が続くことをフィルは期待していたが、彼に対して本気になりつつあることを自覚したダルレー夫人は彼の前から姿を消してしまう。
ヴァンカが一連の出来事を知った上でじっと堪えていたことに気づいたフィルは、改めて彼女と結ばれる。そしてフィルは、ヴァンカに対して大きな幸福も不幸ももたらさない小さな自分を見つめるのだった。