顎口虫症(がくこうちゅうしょう、英:Gnathostomiasis)はヒトが顎口虫の幼虫が寄生したライギョ・ソウギョなどの中間宿主を生食することにより感染する疾病。顎口虫は本来終宿主であるイヌやネコ、ブタなどの哺乳動物の胃壁などで成虫となるが、人の体内においては成虫になることができず、幼虫のまま皮下を移動し続け移動性の浮腫などの症状を引き起こす。まれに腸管出血、腸閉塞、血管中を移動し心筋梗塞などが報告される。
顎口虫の卵は水中で孵化し、第一中間宿主のケンミジンコに取り込まれる。これを捕食した第二中間宿主である淡水魚(カムルチー(ライギョ)、ドジョウ、フナ、ナマズ、ブラックバス、ソウギョなど)や両生類、爬虫類の体内で成長する。これらを終宿主である哺乳動物が捕食するとその体内で成虫となり産卵する。
人の体内に入った顎口虫の幼虫は、胃壁や腸壁を破り体内に移行する。皮下組織内を移動した場合、爬行疹(寄生虫の這い回った痕跡)が外部から認められる。幼虫は長期間にわたり生存し続け、臓器、脊椎、脳、眼球に侵入することもある。脳や眼球に到達した場合、脳障害や失明といった重大な症状を引き起こすことがある。
外科的摘出を受ける以外に、メベンダゾールやアルベンダゾールなどを内服する治療があるが、摘出ほど確実ではない。予防方法は淡水魚、爬虫類、豚肉の生食を避ける事、調理器具の洗浄を行う事である。日本人は刺身を好む事から、もともとは生食をしていなかった地域でも刺身にして出す事が度々あり、これが感染の原因になる例も知られる。
顎口虫は、-20℃では5日程度、家庭用冷凍庫(-4℃以下)では12日程度、4℃では1ヶ月程度生存する[4][5]。