馬事公苑

馬事公苑
左が審判棟・右がインドアアリーナ
馬事公苑の位置(東京都区部内)
馬事公苑
所在地
座標 北緯35度38分12.5秒 東経139度38分2.2秒 / 北緯35.636806度 東経139.633944度 / 35.636806; 139.633944座標: 北緯35度38分12.5秒 東経139度38分2.2秒 / 北緯35.636806度 東経139.633944度 / 35.636806; 139.633944
前身 騎手養成・1964年東京オリンピック馬場馬術競技会場
開園 1940年昭和15年)9月29日
運営者 日本中央競馬会(JRA)
設備・遊具 馬場馬術
駐車場 あり
公式サイト jra.jp/facilities/bajikouen/
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馬事公苑(ばじこうえん)は、東京都世田谷区上用賀にある公園。日本中央競馬会(JRA)が運営する馬事普及の拠点である。

概要

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地図
地図

馬事公苑は、1940年東京オリンピックに向けて日本の馬術選手を育成する目的で開設された[1]。同大会は日中戦争の影響で中止となったが、第二次世界大戦後の1964年東京オリンピック2020年東京オリンピックでは馬場馬術競技の会場となった。

現在は、馬事関係の多方面の利用と馬事思想の普及を図る公共施設として馬術競技場、馬匹博覧会等の会場、競技馬の調教場、乗馬趣味の涵養のための乗馬機会の提供場所、競馬騎手講習会場に利用されるものとして設置されている[2]。かつては国営競馬、日本中央競馬会(JRA)の騎手養成所が置かれており、1982年競馬学校が開設されるまでは中央競馬騎手の養成が行われていた。

また、JRA馬事公苑馬術大会のような統合的な競技会のほか、東京馬術大会などの馬場馬術競技、東京障害飛越選手権などの障害馬術競技、ホーストライアルなどの総合馬術競技、近代五種日本選手権大会馬術競技といった各種専門馬術競技会が定期的に開催されており、関東における主要な馬術競技会場となっている。一部の競技会では、競技馬の貸与も行っているほか、隣接している東京農業大学の馬術部の活動拠点として使用されている。

さらに愛馬の日秋分の日)では流鏑馬などの伝統馬事芸能や横鞍や軽乗演技の供覧、馬に親しむ日(競技会などのない第3日曜日、年8回程度)では体験乗馬や馬車運行、ホースショー(5月3日 - 5日)ではJRA馬事公苑馬術大会としての馬場、障害飛越競技に加えて警視庁第三方面交通機動隊騎馬隊やアンダルシア馬演技の供覧といった馬事普及の活動を行っている。

東京への招致が決まった2020年夏季オリンピック・パラリンピックの競技会場の一つに選定され、馬場馬術競技および障害馬術競技ならびにパラ・ドレッサージュ(障害者馬場馬術)競技が行われることとなり、2016年12月31日をもって会場整備に伴う工事のため休苑となり[3]、2017年1月末には栃木県宇都宮市に事業所を移転、「JRA馬事公苑宇都宮事業所」として事業を行ってきた[4][5]

新型コロナ禍に伴い、東京オリンピックは1年延期して2021年(令和3年)に開催された。用賀の本苑は2023年(令和5年)11月3日に再開放された[6]

歴史

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  • 1934年(昭和9年):帝国競馬協会日本競馬会の前身)が東京市世田谷区用賀(現在の世田谷区上用賀)の土地約5万坪の土地を30万円で購入。
  • 1939年(昭和14年)3月29日 :建設着工。
  • 1940年(昭和15年)9月29日 :開苑。
  • 1942年(昭和17年):用賀に住んでいた第40代内閣総理大臣東条英機が、馬に乗って来苑して視察[7]
  • 1944年(昭和19年):「修練場」と改称。
  • 1948年(昭和23年):国営競馬の開始に伴い「農林省畜産局競馬部東京競馬事務所」に改称、「騎手養成所」を復活。
  • 1950年(昭和25年):第1回長期騎手講習(競馬学校騎手課程の前身)開始。
  • 1953年(昭和28年):馬事公苑近くの陸軍衛生材料廠跡地在日米軍倉庫(SETAGAYA WAREHOUSES)が建設された[8]
  • 1954年(昭和29年)9月16日:日本中央競馬会の設立により同会の管轄下に置かれ、再び「馬事公苑」の名になる。
  • 1964年(昭和39年):東京オリンピックの馬術競技開催。
  • 1982年(昭和57年)3月23日競馬学校開校、騎手養成業務の全てを競馬学校に移管。
  • 1991年平成3年):スパニッシュ・ライディング・スクール(スペイン王立乗馬学校、オーストリア)来日公演。明仁天皇美智子皇后行幸啓
  • 1998年(平成10年):カドルノワール・ド・ソミュール(国立乗馬学校、フランス)来日公演。明仁天皇・美智子皇后行幸啓。
  • 2016年(平成28年):2020年夏季オリンピック・パラリンピックに向けた会場整備に伴う工事のため、同年12月31日をもって休苑。
  • 2017年(平成29年):栃木県宇都宮市(旧・競走馬総合研究所本所)に移転、名称を「JRA馬事公苑宇都宮事業所」と改める。
  • 2021年(令和3年):2020年夏季オリンピック・パラリンピックの馬術競技開催。
  • 2023年(令和5年)11月3日:東京都世田谷区上用賀の本苑に戻り、リニューアルオープン。
  • 2026年(令和8年):愛知・名古屋アジア競技大会の馬術競技開催予定。

新しく生まれ変わった馬事公苑

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2023年(令和5年)11月3日、改装工事が終了し馬事公苑はリニューアルオープンし、以下の施設が誕生した[9]

  • メインアリーナ(TOKYO2020メモリアル):東京2020大会でも使用された馬場で、今後も馬術競技の主たる会場として使用される。
  • はらっぱ広場:正門を入ると眼前に広がる芝生の広場。通常では区民の安らぎの場として使われ、また、イベント会場としての用途もある。
  • 子ども広場:正門より右側に位置する、様々な遊具を備えた子供のための遊び場。
  • 彩(いろどり)のこみち:四季折々の花と樹木で彩られた散策路である。
  • ホースギャラリー:正門より左側に位置するメインオフィス棟の1階部分にあり、馬や馬術関連の書籍・映像が楽しめる。カフェスタンドや売店・キッズコーナーなどを併設し、休憩所としての役割もある。また、ホースシミュレーターで本格的な乗馬気分を体験することもできる。
  • 武蔵野自然林:原生林を残した森の中にある遊歩道 - オリンピックテラスで散歩を楽しめる。

三つの苑訓

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騎道作興きどうさっこう
至誠以って騎道作興すべし
百練自得ひゃくれんじとく
努力以って百練自得すべし
人馬一如じんばいちにょ
和協以って人馬一如たるべし[2]

旧馬事公苑施設

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  • 厩舎:本厩舎4棟(156頭収容)、外来馬用厩舎(149頭収容)、検疫厩舎(6頭収容)
  • インドアアリーナ:覆(屋内)馬場、95m×42m、スタンド(2,300人収容)、道路をはさんだ立地で地下通路で結ばれている
  • メインアリーナ:砂馬場、123m×62m、スタンド(760人収容)
  • グラスアリーナ:芝馬場、112m×67m、スタンド(1,746人収容)
  • 走路:砂、1周1,100m
  • ドレッサージュアリーナ:砂馬場
  • 耐久競技(総合馬術競技)用走路:固定障害(飛び込み水濠など)
  • 放牧場
  • 庭園:日本庭園(ひょうたん池)、児童遊園

馬事公苑出身の主な騎手

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長期騎手課程

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短期騎手課程

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周辺

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脚注

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  1. ^ しなのき書房 2020, p. 84.
  2. ^ a b 武市銀治郎『富国強馬 ウマからみた近代日本』講談社〈講談社選書メチエ 149〉、1999年2月、第5章3。ISBN 4-06-258149-3 
  3. ^ JRA馬事公苑からのお知らせ”. JRAニュース. 日本中央競馬会 (2016年2月5日). 2018年3月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月25日閲覧。
  4. ^ 感謝Day&「サンクスホースデイズ in JRA馬事公苑」”. JRAニュース. 日本中央競馬会 (2016年10月8日). 2018年3月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月30日閲覧。
  5. ^ JRA馬事公苑 休苑のお知らせ”. JRAニュース. 日本中央競馬会 (2016年12月1日). 2018年3月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月1日閲覧。
  6. ^ 「馬事公苑 7年ぶり開放 式典に溝端淳平さん」『読売新聞』2023年11月4日、朝刊、都民面。
  7. ^ しなのき書房 2020, p. 86.
  8. ^ しなのき書房 2020, p. 80.
  9. ^ JRA馬事公苑のリニューアルオープン【馬事公苑】”. JRAニュース. 日本中央競馬会 (2023年7月25日). 2024年9月28日閲覧。

参考文献

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  • しなのき書房 編『写真が語る 世田谷区の100年』いき出版、2020年1月31日。ISBN 978-4-86672-044-9 

関連項目

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外部リンク

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