馬場 あき子(ばば あきこ、1928年(昭和3年)1月28日 - )は、日本の歌人、評論家、能作家、教育者。勲等は旭日中綬章。歌誌かりん主宰(短歌結社:歌林の会)[1]、日本芸術院会員、文化功労者。本名は岩田 暁子(いわた あきこ)[2]。かつての本名は馬場 暁子(ばば あきこ)。
小学生時代に韻文の面白さに目覚め、『古今集』や『平家物語』の韻律に強く心を揺さぶられた。1948年に昭和女子大学国文科卒業後、中学、高校で教鞭をとった。
窪田章一郎に師事し、その主宰誌「まひる野」に入会。1977年、歌作と著述に専念するために教職を辞した。翌年には歌誌「かりん」を創刊。歴史の裏側に追いやられてきた、紡ぎ、包丁を持つことに象徴される「女手」の意味を掘り返し、そこに思想の根元と創作の動機を見据えようとした。歌集に『早笛』(1955年)、『飛種』(1997年)など。能の舞手であり、その方面への造詣も深い。評論に『式子内親王』(1969年)、『鬼の研究』(1971年)などがある。
歌人[2]、および、文芸評論家で、短歌結社「かりん(歌林の会)」を主宰する[1]。朝日歌壇[3]、岩手日報「日報文芸」、新潟日報読者文芸選者も務める。古典や能に対する造詣が深く、喜多実に入門、新作能の制作も行っている。また、『鬼の研究』など民俗学にも深い知識を持つ。日本芸術院会員に選任され、文化功労者として顕彰された。
門下には梅内美華子、坂井修一、米川千嘉子、今野寿美、日高堯子、松村由利子、日置俊次など。
東京府出身、日本女子専門学校(現・昭和女子大学)国文科卒業[2][1]。1947年(昭和22年)、「まひる野」に入会し、窪田章一郎に師事[2]。喜多流宗家に入門[1]。1948年(昭和23年)、この年より東京都の中学・高校の教師を務める。
1955年(昭和30年)、第一歌集『早笛』を刊行[2]。古典、とりわけ能への造詣が深く独特な歌風を拓き、以後『地下にともる灯』(1959年)、『無限花序』(1969年)、『飛花抄』(1972年)を刊行[2]。1959年(昭和34年)より翌年にかけて、教職員組合の婦人部長として、安保闘争のデモ等に参加。岸上大作らとの関わりを持つ。1971年(昭和46年)、評論『鬼の研究』を出版[4]。1977年(昭和52年)、教員生活を終え「まひる野」を退会。歌誌『かりん』を創刊。以後、『朝日新聞』歌壇選者、NHK市民大学、NHKラジオ・テレビ趣味講座などで活躍。1998年(平成10年)、『馬場あき子全集』(三一書房)完結。
1995年(平成7年)、新作能「晶子みだれ髪」を上演[1]。1997年(平成9年)、新作能「額田王」を初演[5]。2004年(平成16年)、新作能「小野浮船(おののうきふね)」を初演[6]。
2017年(平成29年)、新作能「利休」を上演[7]。
夫は歌人の岩田正[2]。
- 早笛 まひる野会, 1955. まひる野叢書
- 地下にともる灯 馬場あき子歌集 新星書房, 1959. まひる野叢書
- 無限花序 馬場あき子歌集 新星書房, 1969.
- 飛花抄 新星書房, 1972. まひる野叢書
- 『桜花伝承』牧羊社、1977(現代短歌女流賞・昭52)
- 馬場あき子歌集 国文社, 1978.4. 現代歌人文庫
- 雪鬼華麗 馬場あき子歌集 牧羊社, 1980.6. かりん叢書
- うつぎ丘陵 馬場あき子歌集 沖積舎, 1982.6.
- 『晩花』短歌新聞社, 1985.6. 昭和歌人集成(ミューズ女流賞・昭61)
- 『葡萄唐草』立風書房, 1985.11 のち短歌新聞社文庫(迢空賞・昭61)
- 雪木 歌集 角川書店, 1987.7.
- 馬場あき子歌集 短歌研究社, 1987.1. 短歌研究文庫
- 『月華の節』立風書房, 1988.12(詩歌文学館賞・1989)
- 南島 馬場あき子歌集 雁書館, 1991.11
- 『阿古父』砂子屋書房, 1993.10. かりん百番(読売文学賞・1994)
- 暁すばる 馬場あき子歌集 短歌新聞社, 1995.9. 現代女流短歌全集
- 『飛種』短歌研究社, 1996.3.(斎藤茂吉短歌文学賞・1997)
- 青椿抄 馬場あき子歌集 砂子屋書房, 1997.4. かりん叢書
- 馬場あき子百歌 歌林の会 編著. 三一書房, 1998.5.
- 青い夜のことば 馬場あき子歌集 雁書館, 1999.11. かりん叢書
- 飛天の道 馬場あき子歌集 砂子屋書房, 2000.9. かりん叢書
- 世紀 馬場あき子歌集 梧葉出版, 2001.12. かりん叢書
- 九花 馬場あき子歌集 砂子屋書房, 2003.12. かりん叢書
- 馬場あき子歌集 続 短歌研究社, 2004.3. 短歌研究文庫
- 太鼓の空間 馬場あき子歌集 砂子屋書房, 2008.12. 新かりん百番
- 鶴かへらず 馬場あき子歌集 2011.9. 角川短歌叢書
- 舟のやうな葉 馬場あき子歌集 短歌新聞社, 2011.11. 新現代歌人叢書
- あかゑあをゑ 歌集 本阿弥書店,2013.11. かりん叢書
- 記憶の森の時間 KADOKAWA/角川学芸出版,2015.3. かりん叢書
- 『馬場あき子全集』全13巻 三一書房、1995-98(毎日芸術賞・1997)
- 『馬場あき子全歌集』角川書店、2021.9.
- 式子内親王 1969. 紀伊国屋新書 のち講談社文庫、ちくま学芸文庫
- 鬼の研究 三一書房, 1971. のち角川文庫、ちくま文庫
- 大姫考 薄命のエロス 大和書房〈大和選書〉, 1972.
- 穢土の夕映え 発心往生論 芸術生活社, 1974.
- 遊狂の花 大和書房, 1974.
- 修羅と艶 能の深層美 講談社, 1975.
- 古典への漂遊 読売新聞社, 1977.10.
- 百人一首 平凡社カラー新書 1977.12.
- 日本女歌伝 角川書店, 1978.10.
- 古典への飛翔 読売新聞社, 1979.6.
- 世捨て奇譚 発心往生論 1979.2. 角川選書
- 歌枕をたずねて 1981.2. 角川選書
- 与謝野晶子の秀歌 短歌新聞社〈現代短歌鑑賞シリーズ〉, 1981.1.
- 和泉式部 美術公論社, 1982.9. のち河出文庫
- きもの随想 織と染 美術公論社, 1982.10.
- 歌への招待 日本放送出版協会, 1983.10. NHK市民大学
- 歌と花 わが心の風景 白水社, 1983.11.
- 古典余情 読売新聞社, 1983.12.
- 風姿花伝 岩波書店, 1984.11. 古典を読む のち同時代ライブラリー,岩波現代文庫
- 短歌への招待 読売新聞社, 1987.12.
- 馬場あき子の謡曲集 集英社, 1987.5. わたしの古典 のち文庫
- 季節のことば 講談社, 1988.6.
- 短歌その形と心 NHK短歌入門 日本放送出版協会, 1990.5
- かく咲きたらば 朝日新聞社, 1992.6.
- 短歌セミナー 短歌新聞社, 1993.9.
- 現代短歌に架ける橋 馬場あき子歌人論集 雁書館〈雁叢書〉, 1994.10.
- 古典往還 読売新聞社, 1994.11.
- 源氏物語と能 雅びから幽玄の世界へ 堀上謙 写真. 婦人画報社, 1995.12.
- 歌の彩事記 読売新聞社, 1996.11.
- 閑吟集を読む 弥生書房, 1996.3.
- 女歌の系譜 1997.4. 朝日選書
- はるかな父へ うたの歳時記 小学館, 1999.7.
- 最新うたことば辞林 作品社, 2001.2.
- 能の四季 堀上謙 写真 たちばな出版, 2001.9.
- 男うた女うた. 女性歌人篇 2003.10. 中公新書
- 掌編源氏物語 潮出版社, 2004.3.
- 花のうた紀行 新書館, 2004.11.
- 歌説話の世界 講談社, 2006.4.
- ゆふがほの家 不識書院, 2006.10.
- 黒川能の里 庄内にいだかれて 大石芳野写真 清流出版, 2008.2.
- 読んで愉しむ能の世界 淡交社, 2009.3.
- 歌よみの眼 日本放送出版協会, 2010.1.
- 能・よみがえる情念 能を読む 檜書店〈ひのき能楽ライブラリー〉, 2010.2.
- 日本の恋の歌 角川学芸出版, 2013.3.
- 短歌のすすめ 現代に生きる不滅の民衆詩 大野誠夫,佐佐木幸綱共編 1975. 有斐閣選書
- 花と余情 能の世界 写真: 吉越立雄 淡交社, 1975. 淡交選書
- 歴史のヒロインたち 永井路子共編. 光風社書店, 1975.
- 「方丈記」を読む 松田修共著 講談社, 1980.6. のち講談社学術文庫
- 日本名歌小事典 日本人の心のふるさと 編. 三省堂, 1984.6.
- 秘宝三十六歌仙の流転 絵巻切断 NHK取材班共著 日本放送出版協会, 1984.4.
- 和歌の読みかた 米川千嘉子共著 岩波ジュニア新書 1988.6.
- 絵と物語の交響 絵巻の世界 宮次男共編. 日本美を語る ぎょうせい, 1989.11
- 新古今和歌集・山家集・金槐和歌集 佐藤恒雄共著 新潮社〈新潮古典文学アルバム〉1990.9.
- 能 華の風姿 堀上謙共著. 三一書房, 1990.7.
- 韻律から短歌の本質を問う 編. 岩波書店, 1999.6. 短歌と日本人
- 歌ことば歌枕大辞典 久保田淳共編. 角川書店, 1999.5.
- 現代秀歌百人一首 篠弘共編著. 実業之日本社, 2000.11.
- 恋うたの現在 日本近代文学館編 中村稔共責任編集. 角川学芸出版 ; 2006.5.
- 「かりん」三十年史 編. 歌林の会, 2008.5.
- 馬場あき子と読む鴨長明無名抄 花山多佳子,栗木京子,水原紫苑,米川千嘉子,松平盟子,小島ゆかり,川野里子,桜川冴子,石井照子共著. 短歌研究社, 2011.1.
- 新・百人一首 近現代短歌ベスト100 岡井隆, 馬場あき子,永田和宏,穂村弘, 文藝春秋〈文春新書〉, 2013, ISBN 9784166609093
- 寂しさが歌の源だから 穂村弘が聞く馬場あき子の波瀾万丈 角川書店、2016.6
- もう一度楽しむ能 友枝真也共著, 淡交社, 2021.3.
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太字は恩賜賞受賞者。名跡は受賞時のもの。表記揺れによる混乱を避けるため漢字は便宜上すべて新字体に統一した。 |
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