高次フラーレン(Higher fullerenes)は、70個以上の炭素で構成されるフラーレン分子である。六角形と五角形の面が融合して籠の形を作っている。
1990年、W・クレッチマーとD・R・ハフマンは、kgもの量のフラーレンを簡単に効率良く合成できる方法を開発し、フラーレンの研究が一気に進んだ。この技術では、ヘリウム中で高純度の2つのグラファイト電極の間をアーク放電させることで、炭素のすすを生成する。または、グラファイトのレーザーアブレーションか芳香族炭化水素の熱分解によってすすを生成する。フラーレンは、すすの中から多段階の過程によって抽出される。まずは、すすを適切な有機溶媒に溶かす。この段階で、最大70%のC60と15%のC70、その他のフラーレンからなる溶液ができる。これをクロマトグラフィーを用いて分離する[1]。この方法でmg量の高次フラーレンを得ることができ、また、C76、C78、C84は試薬として販売されている。
化学式 | CAS登録番号[2] | Nis[3] | 分子対称性[4][5] |
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C60 | 99685-96-8 | 1 | Ih |
C70 | 115383-22-7 | 1 | D5h |
C72 | 1 | D6h | |
C74 | 1 | D3h | |
C76 | 135113-15-4 | 2 | D2* |
C78 | 136316-32-0 | 5 | D2v |
C80 | 136316-32-0 | 7 | |
C82 | 136316-32-0 | 9 | C2, C2v, C3v |
C84 | 135113-16-5 | 24 | D2*, D2d |
C86 | 135113-16-5 | 19 | |
C88 | 135113-16-5 | 35 | |
C90 | 135113-16-5 | 46 | |
C3996 | 175833-78-0 |
表中で、NISは、フラーレン中で五角形の面同士は隣合わないというルールの中でありうる同位体の数を表している。対称性は、実験的に最も量の多いものを示した。*の記号は、2つ以上のキラル型で対称性を持つことを意味する。
化学式 | 対称性 | 空間群 | No | ピアソン記号 | a (nm) | b (nm) | c (nm) | Z | ρ (g/cm3) |
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C76 | 単斜晶 | P21 | 4 | mP2 | 1.102 | 1.108 | 1.768 | 2 | 1.48 |
C76 | 立方晶 | Fm3m | 225 | cF4 | 1.5475 | 1.5475 | 1.5475 | 4 | 1.64 |
C82 | 単斜晶 | P21 | 4 | mP2 | 1.141 | 1.1355 | 1.8355 | 2 |
トルエン溶液からC76またはC84の結晶を生成すると、単斜対称となる。しかし、C76の溶媒を蒸発させると、面心立方体に変わる。単斜晶と面心立方体の相は、C60とC70でも知られている。