『魍魎戦記MADARAシリーズ』(もうりょうせんきマダラシリーズ)は、角川書店による、漫画、小説、コンピュータRPG、OVA、ラジオドラマ(CDドラマ)に展開するメディアミックス作品群。
『魍魎戦記MADARA』(原作・大塚英志、画・田島昭宇)に端を発する一連の作品群(以下、MADARAシリーズ)は、基となる「始まりの大陸」での物語と、メインキャラクター達が転生した様々な時代の物語から構成され、様々なメディアで展開される108編にも及ぶ膨大な作品群だとされているが、全てが語られているわけではなく未完のものが多い。
漫画『魍魎戦記MADARA』(後に他のMADARAシリーズ作品と区別するため『摩陀羅壱』と呼ばれることがある)は、「始まりの大陸」を舞台に、光の皇子・摩陀羅が麒麟やカオス、聖神邪などの仲間たちとともに、恐怖政治を行う金剛国の魔王ミロク帝の軍勢と戦う物語である。摩陀羅が来世に去った後、摩陀羅の仲間たちのそれぞれの旅立ちが描かれた短編『MADARA青』や『風になるまで』が、後にコミック『MADARA転生編』に収録されている。また、摩陀羅壱を原作としたファミリーコンピュータ用ゲームソフト『魍魎戦記MADARA』(コナミ)が作られた。
漫画『魍魎戦記MADARA摩陀羅弐』では、日本をモチーフとした「耶倭土」と呼ばれる島国に舞台を移し、最初の物語で摩陀羅と戦った敵であった、影王や魍鬼八大将軍の蛇括神ヒョウブが転生した姿である伐叉羅や獅子丸をメインとして物語が進む。
『摩陀羅壱』の時代から直接続く時代の物語となる、漫画『魍魎戦記MADARA赤(もうりょうせんきマダラ・ラサ)』では、摩陀羅が去った後に「失われた大陸」フダラク大陸へ渡った聖神邪(ユダヤ)を核に物語が進む。タイトルの赤(ラサ)は赤い砂に覆われたフダラク大陸と、聖神邪(ユダヤ)が赤の戦士と位置づけられていることによる。『魍魎戦記MADARA赤』のプレストーリーである短編『ゲド・ユダヤ伝』が、後にコミック『MADARA転生編』に収録されている。
小説『死海のギルガメシュ』とそれに関連する作品群では、死海付近を舞台とし、聖神邪(ユダヤ)とカオスの因縁と、摩陀羅の転生であるコケバを中心に物語が進む。後に『MADARA外伝 死海のギルガメシュ』として花津美子によって漫画化された。
それぞれの作品には、公開された設定集と、周辺作品群が置かれ、物語の周辺をフォローした。たとえば、大塚英志原作、花津美子の画による漫画『ギルガメシュ・サーガ』はカオスと聖神邪(ユダヤ)を主人公とした物語であり、摩陀羅を主軸とする作品の外伝的な位置付けである。星樹による漫画『MADARA四神編』は、摩陀羅の転生である神代斑が主人公で、スーパーファミコン版ゲーム『魍魎戦記MADARA2』と関連する物語となった。これらのサイドストーリーを含めた多くの物語は、神話や伝説を取り入れた複雑な設定を背景とし、主要な登場人物が転生し、それぞれの物語を築いていく。MADARAシリーズの各作品への展開が進むにつれて、「アガルタ」と呼ばれる神々の異世界と、その支配によってそれぞれのキャラクターに定められた宿命が生み出す、逃れられない宿命に翻弄され苦闘する人間の物語という側面が強くなっていった。また、『海賊本』と称したアンソロジーコミックが作られている。
ラジオドラマ『MADARA転生編』(文化放送)では、舞台を現代日本に移し、ミロクや影王、聖神邪(ユダヤ)や麒麟の転生したキャラクターが、それぞれの宿命に影響を受けながら、様々な事件に遭遇する。この作品では、MADARAシリーズ中期以降において主役の座に落ち着いた聖神邪(ユダヤ)が転生した姿である犬彦綬陀矢と、麒麟の転生である伏姫輝燐を中心に物語が進む。物語冒頭が『MADARA転生編』(画・田島昭宇)、中盤以降が『MADARA影(マダラ・シャドウ)』(画・高橋明)としてそれぞれ漫画化されたが、ともに未完である。
更に『転生編』の物語は、小説『MADARA MILLENNIUM』(大塚英志、1999年)によって結末に向かい始めたかのように見えたが、同作は第1巻のみが刊行された状態のまま、その後日譚である小説『摩陀羅天使篇』(大塚英志)の方が先に展開することとなる。
『天使篇』は、『転生編』での物語、ひいてはMADARAシリーズの108の物語が全て完結した後の物語とされ、聖神邪(ユダヤ)の転生である犬彦綬陀矢を中心に物語が綴られる。その他主要な登場人物の殆どが『転生編』から引き継がれているが、当時『転生編』は未完であったにもかかわらず、その結末において彼らはミロクやアガルタとの最終決戦に敗れ、それまで転生によって受け継いできた記憶と力を失ってしまったという設定が先行した状態で執筆が開始された。現在、第3巻まで刊行された状態で未完のまま。
一方、長らく未完であった『転生編』の物語は、小説『僕は天使の羽根を踏まない』(大塚英志、2003年)として新たに書き直されることで完結を果たし、同作はMADARAシリーズの108の物語の完結編と位置付けられた。
MADARAシリーズは構想上、8編の本編と100編の外伝による108編の物語で構成されている。様々な時代や様々な舞台で展開して時には時間を遡って、それぞれの話が交錯している。また「MADARA・SAGA」は舞台となる場所によって大きく分類されている。ショートエピソードの場合、108編の中の1編の中の小さなエピソードの1つという扱いの場合もある。メディア展開による差異などはパラレルとして別の1編とする場合もあれば、同じ1編の異伝とする場合もある。
本編にあたる8編は『壱』、『赤』、『弐』、『転生編』など。(残りは不明)
マダラの眷属である、赤の戦士と青の戦士の霊性。対になった魂をもつ存在であり、2人が揃った時にこそ本来の力が発揮される。
妣(ひ)の力とは、その時々に応じて愛する者を「母」や「恋人」そして「姉妹」として庇護するグレートマザーの力であり、サクヤやキリンと同質の力。サクヤ姫がアガルタから妣の力を持ち出した際に分散したため、多数存在する。
アガルタでは下位カーストに属する魔界の魍鬼たちの長。影王ないし真王としての暗黒面に目覚めたマダラに付き従う。「初代ウガヤ王編」では、八つ首の竜。「壱」では、切り落とされた竜の八つ首が魔界に逃げた後、ミロク帝との九鬼曼荼羅を使った契約によって召喚された金剛国八大将軍。「弐」では、白沢が宿った徐福によって異界に封印されていた耶倭土旧神。
「翻訳:MADARA PROJECT」となっている日本語書籍がいくつかあるが、MADARAシリーズ作品ではない。これらはMADARAシリーズの中国語翻訳を手がける許月珍が、「MADARA PROJECT」の名義を使用しており、中国の作品を日本語へ翻訳したものである。
『魍魎戦記摩陀羅全集 Vol.1 - 4 MADARA壱 改訂版』(全4巻)(電撃コミックスEX・メディアワークス)
『田島昭宇MADARA完全コレクション1 - 5 MADARA』(全5巻)(KadokawaComicsA・角川書店)
『マル勝ファミコン』(角川書店)1990年13号~1992年4号にて連載された。
それぞれ1冊の長編コミックになる予定だったが未完に終わっている。
魍魎戦記MADARA連載30周年を記念して2017年より2018年にかけて限定愛蔵版として全5巻で刊行された。