黒衣(くろご)は、歌舞伎や人形浄瑠璃で、観客からは見えないという約束事のもとに舞台上に現われ、後見として役者や人形遣いを助けたり、小道具を役者に渡したり舞台から下げたりする係。また彼らが着用する黒づくめの特殊な衣装のこと。黒具(くろぐ)ともいう。
黒子(くろこ)ともいうが、「黒子」は当て字、「くろこ」は訛読で、どちらも正しくはないものが慣用化して一般に定着してしまったものである(本来は「黒子」と書いて「ほくろ」と読む)。
歌舞伎における黒衣には、次の2種類がある。
黒衣は見えないことが約束事になっているが、場面によっては黒の色がかえって目立ってしまう場合がある。そのため、色違いの装束があり、海や水辺の場面には青装束の波衣(なみご)・雪の場面には白装束の雪衣(ゆきご)となる。
「黒衣・黒子」にはまた、本来の「見えないことになっている者」「そこには居ないことになっている者」という側面から意味が転じて、現代語では「表には名を出さない者」「裏方に徹する者」といった意味で使われることがある。