生産時期 | November 1995から1999まで |
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販売者 | AMD |
設計者 | AMD |
生産者 | AMD |
CPU周波数 | 133 MHz から 160 MHz |
FSB周波数 | 33 MHz から 50 MHz |
プロセスルール | 0.5 から 0.35μm |
アーキテクチャ | x86 |
命令セット | x86 (IA-32) |
拡張命令 | なし |
ソケット | Socket 3・Socket 6 |
パッケージ |
168-pin PGA 208-pin SQFP |
前世代プロセッサ | Am486 |
次世代プロセッサ | AMD K5 |
トランジスタ | 190万個 |
L1キャッシュ | 4-way associative 16 KiB unified code and data, write-back or write-through. |
L2キャッシュ | Motherboard dependent |
内部クロック | 4逓倍、〜133MHz(参考として160MHz) |
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外部クロック | 〜33MHz |
Am5x86はAMDが開発した486クラスのx86互換のマイクロプロセッサである。1995年11月の発売当時、Intel製、互換品を含めて全ての486プロセッサの中では最速となった。
Am5x86は既存のEnhanced Am486DX4チップの製造プロセスを従来の0.50μmから0.35μmへシュリンクし、合わせて内蔵1次キャッシュを倍増することで高速動作を可能としたもので、内部でクロックを4逓倍して使用していた。最速製品で周波数は外部33MHz、内部はその4倍で133MHzである。Enhanced Am486DX4に最適化されたシステムとは完全に互換性があり、3倍速で動作させた場合の性能はほぼ同じである。
このCPUは開発コードをX5といい、チップパッケージにも「Am5x86-P75」という製品名と併記して「AMD-X5-133ADZ[1]」、あるいは「Am486DX5-133W16BHC」[2]などの表記がなされていた。
通常のi486対応マザーボードには4倍速動作設定は用意されていなかったため、Am5x86は代わりに2倍速設定を4倍と読み替えて動作するように設計された。そのため、古いマザーボードでも2倍速に設定できれば4倍速で動作したが、通常の486系CPUとはコア電圧が異なっていた[3]ため、電圧変換の必要があった。
Am5x86はPentium 75MHzと同等な性能をベンチマークで出した。また、ライバルであったサイリックスのCx5x86 (M1sc) とは異なり、486システムとソケットレベルでのほぼ完全な互換性[4]があった。
このCPUを使用するユーザーは周波数を40MHz(内部160MHz)でオーバークロック動作させるケースが多く、AMD自身も「参考」として133MHz動作時と並べて160MHz動作時のベンチマーク結果を雑誌広告に掲載しており、またAMD自身が公開した486系プロセッサのアプリケーションノートなどでもAMD-X5-160として160MHz動作版を提供する計画があったことを窺わせる記述が存在する[1]。結局、K5とのラインナップ整合の問題からこのCPUの160MHz版はリリースされなかったが、これらの傍証から、本来は160MHz動作を前提として計画・設計されていたと推測される[5]。なお、160MHzにオーバークロックした場合、使用マザーボードのチップセットやメモリ性能にもよるが、概ねPentium 90 - 100MHzと同程度の性能を示す。この他、150MHz版もあり、P75+表記があった。これは外部50MHzで内部が4倍ではなく3倍までに制限されており、外部50MHzにできない(たいていの)システムに使用しても性能はあまり向上しない。
また一部のPCベンダーは最初から160MHz駆動を行い、Pentium100MHz相当CPU搭載として、Pentium搭載マシンの半額程度の価格での販売も行なった(10万円PCの登場)。
これは整数演算に限れば確かにPentium100MHz相当のパフォーマンスが得られており、Pentium搭載ではないがオフィス用途での実用性は充分であった。
またこのプロセッサは初期のPentiumのように浮動小数点演算のバグも無いため、浮動小数点演算処理が少々遅いながらも正確さを求める分野にも、Pentiumの代わりとして急を要するところで利用された。
このプロセッサは初めてモデルナンバーを使用したCPUであった。133MHz駆動のAm5x86がP Ratingで、Pentium 75MHzと同等の性能を示したことから、これを根拠としてX5を「Am5x86-P75」として販売したものである。もっとも、浮動小数点演算機能については、P Ratingで示されたPentiumと比較して大きく見劣りし、486系プロセッサのアーキテクチャデザインの限界を示すことにもなった[6]。
Am5x86はAMD K5の開発が遅れている間、AMDにとっての重要な収入源となった。
Am5x86は1999年まで生産が続けられ、安価なデスクトップやノート、そして過去のCPUのアップグレード用としても用いられた。数社は電圧変換キットとプロセッサを同梱した形で販売した。
Am5x86は組み込み用プロセッサとしてはÉlan SC520 マイクロコントローラとして生産が続けられている。