Microsoft Transaction Server(MTS)は、他のアプリケーションに容易にトランザクションを実装しサポートするサービスコンポーネントである。
MTSアーキテクチャは以下の要素から構成される。
MTS実行部の制御下で動作するCOMコンポーネントをMTSコンポーネントと呼ぶ。MTSコンポーネントは全てDLLとして開発され、1つ以上のCOMコンポーネントとして実装される。これらのコンポーネントがMTS実行部の管理下で展開され実行される。通常のCOMコンポーネントと同様、IClassFactory を実装したオブジェクトは、そのコンポーネントの新たなインスタンスを生成する Factory オブジェクトとして機能する。
MTSはFactoryラッパーオブジェクトとObjectラッパーを実際のMTSコンポーネントとそのクライアントの間に挿入する。従って、クライアントがMTSコンポーネントを呼び出すと、ラッパー(Factory と Object)が常にそれを横取りし、独自のインスタンス管理アルゴリズム Just In Time Activation (JITA) を呼び出しに注入する。そしてラッパーが実際のMTSコンポーネントを呼び出す。
さらに、コンポーネントの展開属性の情報に基づき、それらラッパーオブジェクト内でトランザクションロジックとセキュリティチェックも行われる。
MTSコンポーネントそれぞれに対応して、IObjectContext インタフェースを実装した Context オブジェクトが存在する。Context オブジェクトは、トランザクションに関する情報、セキュリティ情報、展開情報など、そのコンポーネントに固有の情報を保持する。MTSコンポーネントは IObjectContext インタフェースを通して Context オブジェクトを呼び出す。
MTSでは、クライアントからの呼び出しがコンテナに到達して初めて中間層の実際のMTSコンポーネントが生成される。コンポーネントは常に動作しているわけではないので、システムリソースを浪費しない(ただし、ラッパーとスケルトンは常に動作している)。
クライアントからの呼び出しが来ると、即座にMTSラッパープロセスがJITAというインスタンス管理アルゴリズムを起動する。実際のMTSコンポーネントは「ジャストインタイム」方式で生成され、ラッパーからの要求を処理する。そして応答をクライアントに返し、クライアントが SetComplete()/SetAbort() を呼び出すか、トランザクションが完了するか、クライアントがコンポーネントの Release() を呼び出したとき、実際のMTSコンポーネントが破壊される。つまりMTSはステートレスなコンポーネントモデルである。
サーバ上でクライアントが典型的なMTSコンポーネントのサービスを要求したとき、以下のように動作する。
従って、高レイテンシのリソースを非同期リソースプールとして実装でき、その際にこのミドルウェアサーバで与えられるステートレスなJITアクティベーションを利用すべきである。