基礎データ | |
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全長 | 4.47m |
全幅 | 2.34m |
全高 | 2.02m |
重量 | 8.4t |
乗員数 | 5名 |
装甲・武装 | |
装甲 | 前面20mmSNCM材 |
主武装 | 20 mm L/86 HS 820 機関砲×1 |
副武装 | 発煙弾発射機×3 |
機動力 | |
速度 | 58km/h(後進6㎞) |
エンジン |
オチキス4678cc直列6気筒液冷ガソリン 164hp |
懸架・駆動 | トーションバー方式 |
行動距離 | 390km |
SPz.11-2装甲偵察車クルツ(ドイツ語: SPz.(Schützenpanzer=歩兵戦闘車)11-2 Kurz)は、1950年代に開発され、西ドイツで運用された歩兵戦闘車/装甲偵察車である。 同時期に開発されたSPz.12-3ラング(=長)に対し、クルツ(=短)車体であるため、この名で呼ばれる。
原型車両はフランスのオチキス社のフランス陸軍向け試作車両TT6であり、1958年から1962年の間に軽装甲型2,374輌が調達された。うち1,600輌余りがマギルス・ドイツ社でライセンス生産された。
歩兵戦闘車型のタイプ11-2型の武装は砲塔のイスパノ・スイザ社製の86口径20mm機関砲HS820である。ペリスコープを備え、500発の弾薬を備えていた。800~1,000発/分の発射速度を持ち、通常の交戦距離は400~1,200m、最大射程は7,500mであった。砲塔の旋回は手動で行われ、粗動と微動の2段変速であった。[1]また、隠蔽用の発煙弾発射機を3基備えている。
乗員は砲塔に車長、車体前部に操縦手、後部に無線手、小銃手2名の計5名で、車長および操縦手にはペリスコープ、小銃手には50mm防弾ガラスの視察孔が設けられていた。[1]
330Lのタンクを備え行動距離は400km近くに達した。超壕能力は1.5m、超堤能力は0.6mで60%の傾斜を登坂できた。また0.7mまでの渡河能力を有している。
クルツ装甲偵察車は1974年まで機械化歩兵大隊の砲兵小隊に配備され、装甲偵察車としては1982年まで配備されていた。
クルツ装甲偵察車は偵察任務に用いるには騒音の大きい車両であった。また、SPz.12-3ラングと同じく速度が遅く、特に後進速度は6km/hと徒歩よりは早い程度であった。また、前方の駆動輪の車軸は脆く、悪路では破損した。
武装の20mm機関砲は砲塔に左に偏心して搭載されていたため、旋回を“粗動”に設定したままでは、射撃時に人力では保持できないほど左へそれていく傾向があった。また、弾薬の交換は砲塔のスペースが限られ、弾薬帯自体が重いため難しく、専用ツールも必要とされた。
測距儀は搭載していないため、距離の測定は推測に依った。冬期には操縦手のみが弱弱しい暖房の恩恵を受け、残りの人員は数日にわたる任務の中を凍えながら過ごした。もう一つの欠点は貧弱な電装系であり、バッテリーセパレーターを使用し、十分な電圧のあるときのみ無線が使用できた。
クルツ装甲偵察車の偵察任務はルクス装輪装甲車によって置き換えられた。運用は西ドイツ軍に限られた。